日本でのコロナ支援の特色
さらに、コロナ禍に対する政府の財政支援が、日米で対照的なことです。
米国では救済の対象が圧倒的に個人で、個人向け特別給付金が昨年春に1人当たり1,200ドル、昨年暮れに議会がまとめたもので1人当たり600ドル、さらにバイデン大統領の上乗せが1,400ドルあります。しかも、失業保険給付金が昨年春から週に600ドル上乗せされ、バイデン支援策でも週400ドル乗せされます。
このため、個人所得は昨年春から大幅な増加となり、個人消費を支えました。米国のコロナ支援はもっぱら個人支援で、この他PCR検査やワクチン接種に向けた医療分野への支援が積極的に行われています。
これに対して、日本では支援の中心が企業で、持続化給付金、雇用調整助成金が企業に提供され、「GoTo」キャンペーンは企業個人双方に利益となりますが、時短協力金も企業に対する支援です。
困窮する個人の救済が叫ばれ、先の20年度3次補正予算では、地方自治体が自由に使える地方創世特別交付金などを入れましたが、個人への特別給付金の再給付は財務大臣にバッサリ切られました。
米国に比べると個人への直接支援が薄く、食料、住居を失うコロナ難民が多く発生、女性の自殺者も増えています。
家計の株保有は10分の1
それでも財政金融政策によって株価が世界的に上昇し、日本でも30年ぶりに日経平均が3万円を回復、米国では株式主要3指標が最高値を更新しました。
米国では政府による手厚いコロナ支援に加え、住宅価格の上昇と株価上昇が相まって、資産の増大が資産効果を通じて個人消費を押し上げています。
これに対して、日本では株を持つ人は10人に1人と言われ、日銀の資金循環勘定の家計金融資産を見ても、昨年9月末の数字ですが、全体の金融資産1,901兆円に対し、株式は181兆円にとどまり、全体の1割にも達していません。
日本では1,000兆円余りが現金預金で持たれ、株高の恩恵を受ける人は限られています。
広がり続ける「コロナ格差」、資産を持つ人がより豊かに
財政金融政策は、政治による所得の再分配につながります。
財政政策の本来の狙いは、困った人への所得の再配分ですが、これが前述のようにうまく機能せず、財政需要の多くがアフター・コロナ用のデジタル改革、脱炭素化推進事業中心に配分され、コロナ難民の多くは放置されたままです。
しかも、並行して進む大規模金融緩和は世界的な流動性供給によって、株などの資産価格を上昇させています。
つまり、資産を持つ人がますます豊かになり、持たざる者は取り残され、「コロナ格差」が生まれています。
しかも、コロナの収束がなかなか見えないだけに、政策的には長期的な支援体制が取られようとしています。日銀も長期戦に備えた金融緩和策を3月の会合までに検討するといっています。
このままではコロナ禍が長期化するほど、政策面からも金融緩和が追加され、長期化し、資産家には優位な状況が生まれます。