遅れるワクチン接種。日本の消費回復はまだ先
これを前提に、2月下旬から国立病院の勤務医2万人を中心に、医療従事者370万人の接種を開始し、4月以降65歳以上の高齢者に接種を始める意向と言います。
ところが、実際にワクチン接種を進めるうえでは大きな問題があって、簡単には進まないと言います。
そもそも、ファイザー社とモデルナ社から購入する分は、いつどれくらい入ってくるかわからないとのこと。しかも、ファイザー社のワクチンはマイナス75度に冷凍保管する必要があり、その運搬の際に必要なドライアイスの供給にも不安があると言います。
それに、接種に関する情報管理をどう進めるのか、マイナンバーで管理するにしても、住民基本台帳で管理するにも、国と自治体との情報連結ができていないのがほとんどと報じられています。
ワクチン接種にあたる医療従事者の確保、ワクチン接種を行う場所の確保など、多くの課題を抱えています。ワクチン接種が進まないと感染不安の軽減も遅れ、消費者の行動は制限された状態が続き、消費活動にはマイナスとなります。
ワクチン接種が遅れ、感染の収束が遅れると、夏の東京オリンピック・パラリンピックの開催ができなくなる恐れがあります。日本の感染状況が改善せず、しかも海外の国々でも感染が収まらないと、選手の決定、準備、派遣ができなくなります。カギを握る米国のバイデン大統領も、科学的に判断すべきで、まだどうなるかわからないと述べました。
オリンピックの開催ができないとなれば、これが個人消費や海外客を当て込んでいる企業には大きな打撃となります。
そうした中でGDP(国内総生産)の約半分を占め、景気を大きく左右する個人消費の役割がより大きくなります。財政手段が限られれば、より企業の賃金引き上げが大きな意味を持ちます。
賃上げが必要な理由その2:政策の対象が企業への助成金中心
第2は、コロナの支援策が日本では企業向け中心で、消費者の救済策は限定的なことです。
20年度第3次補正予算は19兆円余りの追加財政支出となりましたが、そのほとんどがデジタル化対策、脱炭素化向け対策など、アフター・コロナの経済対策となっています。
その中でコロナ支援策としては、都道府県の医療機関支援のための「緊急包括支援交付金」1兆3,000億円、ワクチン接種の体制整備に5,700億円、営業時間短縮に応じた飲食店への協力金など、自治体が自由に使える「地方創世臨時交付金」1兆5,000億円などで、いずれも企業向けの支援です。
これでは個人消費も、消費関連業界も救われません。