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LINE問題で株価下落、親会社Zホールディングス株は割安か?2事業がお荷物、成長拡大の条件とは=栫井駿介

囲い込みのためのキャンペーン・広告宣伝費をかけ過ぎた

ヤフーもLINEもなのですが、直近で大きく赤字が起こっているというところがあって、その要因として、2年ぐらい前にPayPay20%オフとかお金が当たるみたいなことをガンガンやっていたのを覚えていますでしょうか。当然、この「お金あげる」とか「20%ポイント還元」といったことはすべて費用となります。

とにかくQRコード決済で覇権を取ってしまおうと思ったが故に、各社どんどん広告宣伝費というような形でお金をつぎ込んで行ってしまいます。それが当然、利益にはマイナスという結果になっています。

またヤフーに関して、もっと大きなのが出店料無料です。実はヤフーのショッピングというのは楽天やAmazonの後塵をかなり拝しています。そこで、なんとかここでシェアを奪うためには……ということで、出店料を無料にしました。

出店料無料で確かにこのヤフーショッピングを使うお店というのは増えたのですが、ただ無料ですから、それで収益化するというのはなかなか容易ではありません。お店としてはとりあえず無料だからやっとくかという形で、とりあえず出店だけをするというのは頷けるのですが、それ以上でもそれ以下でもないというのが現状ではないかと思います。

もちろんユーザーは増えているので多少取扱量に関しては増えているのですが、ただここで収益的には悪化しているという状況が続いています。その結果が、先ほどのように赤の折れ線グラフで示した減益という形になって現れています。

いま右肩下がりになっている利益は、今後に伸びるのかどうか。そのことについて、投資家としては検討しなければなりません。

あくまで私の考え方ですが、出店料無料とかQRコード決済でばら撒いたものに関しても、すぐに直接的な利益結びつくものではないという風に考えられます。例えばショッピングに関しては出店が増えて、お店も増えて、そしてユーザーも増えてということはあるのですが、出店料が無料だったらお金を取るポイントがありません。

それから、このお金のばら撒きに関してもQRコードを使ってもらって、多少はお店からの利用料みたいなのを取る形にはなっているのですが、それはクレジットカードとの競争もありますから、やはりかなり安く抑えないといけないということから、あまり儲かる仕組みには今のところをなっていないというのが現状です。

一方で、このヤフーのポータルサイトからの広告収入は盤石です。ヤフーのポータルサイトはインターネットの初期から最も閲覧されているサイトですが、未だに最強という形です。この広告費というのもテレビからどんどんネットへ流れていますから、その流れが続く限りこの広告収入というのはかなり安定しています。グーグルを除くと、日本でここに勝るところはないという風に見えます。

Zホールディングスの今後の戦略は?

では、ここからどうするのかというと、おそらくこのショッピングやLINEを含めたコミュニケーションから、広告に誘導することで収益化を図るのではないかということが考えられます。

つまり、先程のショッピングでお金を取るポイントがないと言いましたが、考えられるとしたらとにかくユーザーが集まってきたということになると、お店は無料でお店を出しているのですが、それだけじゃせっかく来てくれたお客さんを自分のお店に誘導することができません。

そこでヤフーが出店者の皆さんがお金をヤフーに払ってくれたら、あなたのお店の広告を出しますよという風に言います。

このままやっていてもお店としてはなかなか物が売れないので、少しヤフーさんにお金を払ってみようかなというような形で、収益化を図ろうとします。

LINEに関しても今は個人間のやりとりがほとんどですが、最近少しずつ増えてきたのではないかと思うのですが、お店の公式アカウントを登録してもらって、逐一お店のキャンペーンなんかをお知らせすることがあります。私も使っているのですが、それを使うにはお店としては有料になるので、そこで定期的なお金を払ってもらうというような形になってきます。

このような形でヤフーの得意分野である広告を中心に少しずつ、収益化を図っていくということが想定されます。

ただ簡単でもない部分はあります。これらのサイトはポータルサイトを除けば、かなり競争が激しい分野でもあります。

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この表はBCGマトリックスと言って、ボストンコンサルティンググループが開発したプロダクトポートフォリオマネジメントとも言うのですが、このように市場シェアと市場成長率を4つの象限に分けて、市場シェアが高くて市場成長率が高いのを「花形(スター)」、それから市場シェアが高くて市場成長率が低いのを「金のなる木(キャッシュカウ)」、それから市場成長率が高いけどシェアが低いのを「問題児」、最初からどちらも低いのを「負け犬」というような形で事業を分離することによって、この事業をどうやって扱おうかという風に考えるための1つのフレームワークです。

ヤフーやLINEは成長はそんなに急速にも望めるものではなくなっているので、これは金のなる木”キャッシュカウ”であるという風なことが言えます。それから市場成長率も高く、市場シェアも高いのがZOZOだったりします。買収して今およそ50%の株式をZホールディングスが持っています。

この辺だけだとはかなり安定感あるのですけれども、一方で伸びていない、むしろ減益に影響しているのがこのショッピングだったりPayPayです。PayPayは市場シェアはもう1位なのですが、収益化のポイントがやはりあまりないという形になっています。しかもショッピングに関しては楽天とかアマゾンは完全に後塵を拝しています。皆さん楽天とかAmazonはよく使うと思うのですが、ヤフーショッピングとかあまり使わないのではないでしょうか。

私自身はあまり使わないということから、出店料無料でお店は増えてきたかもしれないのですが、今のところ敢えてヤフーで買う理由はないというところではないかと思います。

ポイントに関しても楽天のほうが貯まるということもあるので、同じ値段で売られているのであればやはり楽天を選びたいし、楽に買おうと思ったらAmazonを選ぶという形になります。

こうやってなかなか一筋縄ではないというところではないかと思います。

Next: 苦戦中の事業をどう伸ばす?さらなる成長には飛び道具が必要

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