この下落で割安になった?
さてこれらの見通しを踏まえて、果たして株価は割安かということについて考えてみたいと思います。先ほど説明しましたように。株価は以下のように目先では下がっています。
ヤフーも目標という形で利益の見通しというのを出していまして、2年後の2023年には2,250億円の営業利益を出して、過去最高益を達成するという風な見通しを掲げています。
この数字に関しては、いま行っているマネタイズの施策を着実にやれば、無理な数字ではないという風には見えます。
では、この2,250億円という営業利益に対して、今の株価が割高なのか割安なのかということを考えてみます。
営業利益の2,250億円に対して、ZOZOは50%しか持っていないので、50%はZホールディングスの持ち分ではありません。したがって、ZOZOの利益が400億円ぐらいで、少し伸びて500億、その半分が外部株主、少数株主に持っていかれるとして250億円を引くとします。すると、営業利益2,000億円という数字が出ます。法人税なんかを色々払ったりして60%残ったとします、すると純利益がおよそ1,200億円という数字になります。
じゃあこれで何ができるのかというと、PERが計算できます。直近の時価総額が4.2兆円あって、純利益がそれに対して1,200億円だということになると、割り算すればPERが出せます。
4.2兆÷1,200億ということになると、結果、PERは35倍という数字になります。
直近の営業利益目標が1,600億円で、2023年2250億円になるということで、これから利益が増えることにはなっているのですが、ただその増えた利益に対してもPER35倍ということですから、決して割安といえる数字ではないと考えられます。
正直、広告だけでやっていた時の方が順調に伸びていて、しかもコストは最小限で利益がどんどん伸びていったのですが、ここ数年どんどんコストをかけたことによって、あまり利益が出にくい体質になってしまっているというのが1つあります。
それでPER35倍で今後も淡々と伸びれば、そんなに割高でもないと言えるのですが、よほど大きな飛び道具がない限り、PER35倍を正当化ができる程の大きな成長が見えるかというと、そこまでではないだろうというのが私の感覚です。
決して割安とは言えない
実際、なぜこうなったのかというと、下がったとはいっても、コロナの後一度大きく上がりました。
ここで少し上がりすぎた感があって、今の下落はLINEの不祥事ということもありますが、その上がりすぎた分の調整ということもあるのではないかと思います。
およそ適正な水準だとは思うのですが、大きく割安というわけではないので、いま下がったからといって、闇雲に参入するというのは避けたほうがいいかもしれません。
元々持っている人に関してはそこまで不安のある銘柄でもないですから、長期的な成長を期待してじっと持っているというのもありではないかと思います。いま闇雲にたくさん買うというような状況ではないということです。
まとめとしましては、このLINEの問題は決して致命的ではない、ただしこのZホールディングスはショッピングやQRコード決済でコストがかかっています。
この収益化というのも難しいですから、飛び道具、M&Aなんかがなければ、収益化にはかなり時間がかかるし、大きな利益は目先出せるものではなさそうだということで、株価は割高ではないにしろ、目標利益に対して割安でもないPER35倍というような形になります。
このように緻密に分析すればその企業が割高なのか、割安なのかということを見極めることができます。単に株価が下がったからと割安だということにはならないので、その辺はぜひ注意していただきたいところです。
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『バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問』(2021年3月28日号)より
※記事タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による
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【毎日少し賢くなる投資情報】長期投資の王道であるバリュー株投資家の視点から、ニュースの解説や銘柄分析、投資情報を発信します。<筆者紹介>栫井駿介(かこいしゅんすけ)。東京大学経済学部卒業、海外MBA修了。大手証券会社に勤務した後、つばめ投資顧問を設立。