fbpx

日米株価「格差」は続く。首脳会談で見えた急落要因、日経平均はいったん2万7000円も=馬渕治好

盛りの花~世界経済・市場の注目点

<「台湾」が盛り込まれた日米首脳会談の共同声明>

菅首相が、日米首脳会談のためワシントンを訪れ、4/16(金)に日米首脳会談に臨みました。首相は、現地時間で4/17(土)に米国を発っています。

公表された共同声明では、「尖閣諸島」「東シナ海」「南シナ海」と具体的な地域を挙げて、中国をけん制ないし批判しています。また、特に台湾情勢については、日米両国が「台湾海峡の平和と安定の重要性を強調するとともに、両岸問題の平和的解決を促す」と明記し、また人権問題に関して「香港及び新疆ウイグル自治区における人権状況への深刻な懸念を共有する」と述べられています。

このように台湾について日米首脳会談の共同声明に盛り込んだのは、1969年の佐藤・ニクソン会談以来のことで、当時はまだいわゆる「日中国交正常化」(日本が公式に中華人民共和国を一つの中国政府と認める)の前でした。

こうして日本を米国の同盟国として、共同で中国に厳しく対するべきだ、と共同宣言でうたわれた背景には、もちろん、米国の明確な意思があります。しかし日本側は、確固たる展望を持って、この事態に臨んでいるのでしょうか。

「みんなニコニコ平和に仲良くしましょう」「事態が悪化したら、黙って態度を明確にせず、穴に隠れて何か月かじっと静かにしていれば何とかなる」という姿勢で日本が済ませられるような状況ではなくなってきている、という認識が必要でしょう。

米国とともに、日本が中国に対して、人権問題や領土的野心にきっぱりと否定的な姿勢を示すことが求められている現状であり(求められていなくても、日本自身の意思でそうすべきだと思いますが)、それが日本の中国関連のビジネスに悪影響を与え、日本の経
済や企業収益に打撃になる、ということは、かなりありそうです。

筆者は、すぐに中国が台湾に軍事侵攻する、などと予想しているわけではありませんが、日本が対中姿勢を厳しくすれば、日本製品の不買運動が中国で起こったり、現時点で中国が豪州に対して、銅鉱石などの輸入通関を意図的に遅らせて嫌がらせをしている、という観測が浮上していますが、それと同様のことを、日本に対して中国が仕掛けてきたりすることはありえます。

その際に日本政府が、「企業のことは企業に任せた」として、何らの支援策(中国以外の国向けの輸出支援や、国内経済の刺激策など)も取らないで放置することが憂慮されます。また、中国での日本企業の生産に支障が生じた場合に、企業の調達先を切り替えることを、日本政府が積極的に助けることをしない恐れも感じられます。

今、日本の株価の頭が重い背景に、日中関係の悪化を内外の投資家が懸念している面がある、というより、そうなった場合に日本政府も日本企業の経営もただおろおろするだけ、という事態を投資家が心配しているように、感じられて仕方がありません。

中期シナリオ結論

主要国の株価は、長期上昇基調にあると考える。ただし、2月辺りまでの株高は急速過ぎたため、短期的には主要国の株価がまだ下押しする恐れが残っている。

<短期展望~2021年4月まで>

2月までの株高は、勢いだけが頼みの、危ういものであった。それは主要国の株価全般でも行き過ぎがあったし、物色に偏り(歪み)があり、米国ではGAFAをはじめとするグロース株(成長株)やナスダック銘柄ばかりに買いが集中しており、日本では日経平均がTOPIXに対して大いに買われていた。また、米国株より日本株の上昇力が高かった。

一方で、足元の主要国の経済指標は、昨年4~5月で大底を付けて回復基調にはあるものの、最近では回復一服、ないし反落の様相を強めていた。それと比べて、2月までの株価は行き過ぎであったと判断される。加えて日米比較では、どちらの国でも企業収益のアナリスト予想値は上方修正が続いているが、米国に比べて日本の上方修正の度合いは小幅で、日本株の優位性は正当化しにくかった。

そうした行き過ぎた株価の反落(一種の「正常化」)は、株式市場全体でも、物色面でも、2月後半から3月にかけて進んできた。ただし投資家の強弱感は様々で、大きな材料が無くても売り買いが交錯し、一本調子の株価下落とはならなかった。

こうした株価反落(正常化)の進展は、まだ不十分であり、日米等の株価は、一段の下落の余地が残っていると考える。ただし、当初の見通しに比べ、米国の財政政策、コロナ対応策、連銀の金融政策は、経済正常化に向けて想定以上に大胆に打ち出されており、ニューヨークダウ工業株指数の短期調整時の最安値は、せいぜい3万1,000ドル程度にとどまろう。

日本株についてはとりわけ想定外の好材料はないが、米国株価の堅調さが日本株もある程度支えると見込まれ、日経平均の目先の最安値は2万7,000円程度と予想する。

Next: 「3万円前後まで戻る」2021年末までの中長期展望

1 2 3
いま読まれてます

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

MONEY VOICEの最新情報をお届けします。

この記事が気に入ったらXでMONEY VOICEをフォロー