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「破綻ルート」に入った中国経済。規制連発の習近平は何に焦っているか?労働力不足と中所得国の罠=勝又壽良

高額所得層を叩く理由は

高額所得層の経営している「テック企業」が、当局の規制対象になってきた。

具体的には、フィンテック(ITを利用した金融事業)、インターネット・ゲーム、教育塾の非営利化である。こうして、高額所得者の経営基盤を突き崩せば、高額所得をうることもないという判断であり、大局的な視点を失った短兵急な決定である。

これらの規制が、そこで働いてきた人々を失業させていることに気付かないのだ。これが、新たな雇用問題を発生させている。同時にテック企業という付加価値の高い産業を抑圧することで、GDP成長率を低下させるのである。産業発展の歴史は、第1次産業 → 第2次産業 → 第3次産業という発展コースを辿っている。

テック産業は、最大の付加価値を生む第3次産業である。ここを叩いてどうするのか。「金のなる木」を枯らすようなものである。

習政権は、GDPで米国を抜き「世界一」になることが目標のはずである。現在、それと逆行する道を選択していることは、あまりにも場当たり的な政策である。「モグラ叩き」で夢中になっているが、その後に何も残らないという不毛の戦術を採用しているのだ。

習氏は、テック産業を叩いて製造業へ回帰する意向である。自動的に、GDPの伸び率を抑えるが、米中対立のデカップリング(分離)に備える対策だ。

国内で製造業の自立化を目指すが、肝心の技術と資本を所有するのは西側諸国である。この西側諸国と断絶しては、製造業の発展は覚束ないのである。

この苦難の道について、習氏は「新長征」と粋がっている。新長征とは、毛沢東の指揮した共産軍の逃避行である「長征」(1934~35年)を再び実行する気迫で、製造業の自立化を図るというのだ。

製造業の自立化は、基礎技術の成立していた戦後日本で成功したが、中国では不可能である。時間のロスは明らかであって、その間に人口の超高齢化が進行して「中所得国のワナ」にはまりこむであろう。

「中所得国のワナ」とは、1人当たり名目GDPが1万5,000ドル見当(現在は約1万ドル)で足踏みして、先進国の証である高所得国へ発展できない事態を指す。

第2次世界大戦後、「中所得国のワナ」を突破したのは、日本、韓国、香港、台湾、シンガポールなど限られている。韓国・台湾は日本の植民地であった。香港・シンガポールは英国の植民地だ。日英の植民地政策が、収奪型でなかったことの証明であろう。

Next: 2030年までに中国のGDP成長率は2%に減少か。3つの根拠

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