fbpx

「破綻ルート」に入った中国経済。規制連発の習近平は何に焦っているか?労働力不足と中所得国の罠=勝又壽良

「中所得国の罠」が現実に

冒頭で、2030年までに中国のGDP成長率が2%へ低下する危険性を指摘した。これは、最終的に「中所得国のワナ」に陥る危険性を示している。

まず、2%へ低下する過程から見ていきたい。

1)コロナの「デルタ株」の蔓延によって、感染防止に時間がかかる。有効なワクチンを欠いており、パンデミックからの本格的回復に時間がかかること。

2)不動産バブルの影響で、信用不安が高まっている。これが、経済成長の抑制要因に働く。金融は経済の血液である点を無視してはならないこと。

3)経済成長基盤の脆弱性が明らかになって、ここ数四半期はGDP成長率で米国に抜かれる公算が強く、テック産業抑制のマイナスが表面化すること。

前記の3点について、コメントを付したい。

(1)中国は、パンデミックからはいち早く回復し、習氏は昨年9月に「終息宣言」を出したほどである。その後に、「デルタ株」という感染力が強力なコロナの感染に見舞われている。中国のワクチンは、この「デルタ株」への予防効果が低いとされている。他国の例では、中国製ワクチン接種後に再感染して死者まで出ている。こうして、米英製のワクチンを再接種する事態を迎えている。

中国は、あくまでも自国製ワクチンに拘っているので、再感染防止には「ロックダウン」しか方法がなくなっている。この点が、米国や西側諸国と大きな差だ。米国は、自国製ワクチンの3回目接種に動いており、中国のようなロックダウンを取るわけでない。「コロナと共存」スタイルである。

欧米は、「コロナと共存」であるので、個人消費は活発になっている。感染初期では、「巣ごもり需要」で消費財需要が高まり、中国の輸出需要を盛上げた。現在は、サービス需要に切り替わっており、中国の輸出需要が一巡して下降に向かっている。

中国の個人消費は、ロックダウンの影響を強く受けている。これだけではない。不動産バブルに伴う家計負債の増加から、構造的に消費を抑制しなければならない局面である。習政権は、これに驚いてテック企業虐めを始めているが、見当違いも甚だしい。不動産バブルこそ、個人消費抑制の原因である。

(2)信用不安も経済活動を抑制している。金融機関は、貸出先の返済に疑問点があれば貸出を抑制する。これは、信用創造の不活発化を表し、景気下降の大きな要因になる。この信用創造とGDPとの関係は、クレジットインパルスという指標で判断できる。これは、新規貸出の増加率と経済成長率を対比して拡大か縮小かを見るもの。投資・消費が促されるか、縮小するかが明らかになる。

このクレジットインパルスは、2020年10月にピークアウトした。その後もほぼ一貫して低下し、この4月以降はマイナス圏で推移している。クレジットインパルスは、上昇と下降にそれぞれ2~3年のサイクルとされている。このことから判断すれば、23年秋ぐらいまでは下降するだろう。製造業PMI(購買担当者景気指数)の好転に繋がるのは、その後(約12ヶ月の遅れ)となる。

米中のGDPが逆転へ

(3)今年4~6月期の米国GDPの伸び率は、前年同期比12.2%である。中国の7.9%を上回ることになった。これは、珍しいことと注目されている。多くの米国エコノミストによれば、米国優位の状況は少なくとも、あと数四半期続くとしている。米国の経済成長率が一定期間継続して中国を上回るのは、少なくとも1990年以降では初めてだ。『ウォール・ストリート・ジャーナル』(8月19日付)が報じた。

これは、私が(2)で取り上げた中国のクレジットインパルス動向と、完全に一致していることに注意していただきたい。中国経済は、不動産バブルによる過剰貸付が信用不安を引き起しており、信用創造が機能しない状況にあるのだ。金融という「血液」の循環が滞れば、経済活動は停滞して当然である。

「少なくともあと数四半期」は、米国のGDP成長率が中国を上回る事態になれば、世界の中国経済を見る目はがらりと変わるだろう。これまで、「中国経済万歳」を叫んでいた向きには、とんだ逆風が吹き付けるはずだ。来年一杯の中国GDPが、米国を下回る状態が続けば、習近平氏の面目は丸潰れとなる。

習氏は、すでにこの事態が起ることを察知しているに違いない。こういう前提で、矢継ぎ早に出された企業規制や「共同富裕論」は、火の粉を振り払う予防策と見える。高額所得者を狙い撃ちして、景気低迷の責任を被せようという動きは、共産党独特の責任回避の嗅覚を表している感じだ。

Next: 生産年齢人口のピークは2014年、そこから縮小を続けている

1 2 3 4
いま読まれてます

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

MONEY VOICEの最新情報をお届けします。

この記事が気に入ったらTwitterでMONEY VOICEをフォロー