菅政権打倒を図る野党陣営には、まさに千載一遇のチャンスが訪れました。立憲・枝野氏は「モリカケ、桜、五輪の経費、すべて公開」という暴露戦略を狙っていますが、政権奪取は難しいでしょう。(『マンさんの経済あらかると』斎藤満)
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プロフィール:斎藤満(さいとうみつる)
1951年、東京生まれ。グローバル・エコノミスト。一橋大学卒業後、三和銀行に入行。資金為替部時代にニューヨークへ赴任、シニアエコノミストとしてワシントンの動き、とくにFRBの金融政策を探る。その後、三和銀行資金為替部チーフエコノミスト、三和証券調査部長、UFJつばさ証券投資調査部長・チーフエコノミスト、東海東京証券チーフエコノミストを経て2014年6月より独立して現職。為替や金利が動く裏で何が起こっているかを分析している。
野党には千載一遇のチャンスだが
菅政権打倒を図る野党陣営には、まさに千載一遇のチャンスが訪れました。
総裁任期、衆議院の任期が迫るなか、菅総理が解散カードを切る選択肢が日々刻々と狭まっています。すでに菅政権は機能不全に陥り、日本はまるで無政府状態にあります。内閣支持率は複数の世論調査で30%を割り込む危機的状況にあります。
コロナの感染防止に協力を訴え、緊急事態宣言を拡大延長しても、国民は政府の言うことを聞かなくなり、人流は一向に減りません。飲食店の中には堂々と政府に従わないことを公言し、酒の提供をして大きな利益を上げたとの決算報告をする企業まであります。
戦後の「闇米には手を出すな」と正論をはいて、餓死した人が馬鹿を見たように、政府の要請を受けて、休業要請や時短に応じて倒産した企業が少なくありません。
国民や企業の間に、政府に頼っていては生きていけない、との不信感が強まっています。これが内閣支持率の低下の裏にあり、政権が瓦解寸前の状態となっています。
衆議院選の前哨戦として注目された22日の横浜市長選挙が、これを象徴しています。
ここは総理のおひざ元で、菅総理が全面支援する小此木候補(前国家公安委員長)が、立憲民主が推薦し、コロナの専門家でもある山中候補に大敗しました。自民票が小此木氏と現職の林氏とに割れたためとの見方がありますが、非自民の田中候補、松沢候補の得票を考えると、自公は総得票数でも野党に負けています。
コロナ無策で自滅した菅政権
野党には絶好のチャンス到来ですが、これはいわば菅政権の自滅ともいえます。
最大の失敗は新型コロナウイルスへの対応ができずに、国民を命の不安に陥れてしまったことです。特に大票田の東京では救急車を要請しても、その6割が入院先を見つけられずに帰されると言います。入院調整中の人や、止む無く自宅療養を余儀なくされる人が、東京だけでも3万6,000人を超えました。
そしてワクチンこそが菅政権のコロナ対策の「1丁目1番地」となったのですが、そのワクチン接種体制も、河野担当大臣に一任したままでトラブル続きです。
政府はワクチン接種を望む国民の必要な数は確保していると言いながら、各自治体の現場には、ワクチンが届かず、しかもこれを担う医療従事者の確保もままならず、8月になって接種のペースが急速に鈍りました。
ワクチンを打てないままコロナに感染した50代、40代の人が重症化し、それでも入院先が見つからず、自宅療養を余儀なくされる人は、医者に診てもらえないまま「死ぬかもしれない」との不安を抱えています。
これは政府による医療放棄、政策放棄と取られても仕方ありません。
第5波が既に大きく拡大し、東京などに緊急事態宣言が出る中で、あえて五輪開催を強行し、この間に感染者数は4倍に膨れ上がりました。事前に感染拡大のリスクが指摘されながら、金満IOCの意向に逆らえず、国民の命よりお金の五輪を優先し、五輪期間中も総理はコロナ対策そっちのけで、金メダリストへのツイートに勤しんでいました。
そして、インド由来のデルタ株ばかりか、チリから入国した人がラムダ株を持ち込むことも抑えることができず、今後これがペルーのように猛威を振るうリスクにさらされました。米国のトランプ大統領と同様に、菅政権もコロナの対応を誤ったために自ら政権瓦解を招く形になりました。