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弘前市、困窮する学生に“アップルパイ配布”でツッコミ殺到。「お米にすべき」の代案は否決、地元りんご産業への支援狙いで若者救済は二の次か

コロナ禍で生活が困窮する学生を支援するために、青森県弘前市で「アップルパイ」を配布する計画が進められていることを巡り、ネット上で賛否両論が巻き起こっている。

報道によると、事業費264万円を投じて新型コロナウイルスの影響を受ける大学生らにアップルパイを一切れずつ振る舞う事業案が、市議会予算決算常任委員会において審議され、賛成多数で可決されたとのこと。市の企画課は「コロナ禍でお菓子などを我慢している学生が多いと聞いた。特産品を知ってもらう目的もある」と、配布の意図を説明しているという。

いっぽうで、その際に一部の委員からは、アップルパイではなく米などの主食を配るよう求めた付帯決議案も提出されたものの、賛成少数で否決されたという。

「虚構新聞じゃないのか」との声も

市内のリンゴ生産量は年間約16万トンで、全国の約20%を占めているという弘前市。日本一のリンゴ生産地だけに、毎月5日を「弘前市りんごの日」と定める条例まで存在するなど、市を挙げてリンゴを名産としてプッシュしているというお土地柄だ。

またアップルパイに関しても、地元の観光協会が作った市内に存在する提供店を紹介するガイドマップには、なんと43種類にも及ぶ様々なアップルパイが掲載されているなど、市内の至る所で販売されている模様。弘前市民にとってアップルパイは、部外者が想像する以上に相当身近な食べ物のようである。

ただ、いくらアップルパイが弘前市民にとってソウルフードと言っても過言ではない存在だとはいえ、食うに困っている学生たちに支給するというのは如何なものか、といった声も当然ながら多い。今回の事業案が明らかになった今年8月下旬に出たローカル紙の記事にも、「日々の食事に使う食材の方が良い」「腹の足しにもならない」などの反対意見が紹介されている。

そして今回、その事業案が実際に議会の審議を通ったということで、ネット上では「本当に通過しちゃった」「虚構新聞じゃないのか」といった驚きの声が多数あがる事態に。その波紋は弘前市内に止まらず、全国的に広がる格好になっている。

「嫌なら貰うな」反対派に辟易の声も

様々な報道を総合すると、弘前市による学生の食を支援する取り組みは今回が2回目のようで、今回も支給品として取沙汰されたコメに関しては、初回時にすでに配布しているという。弘前市の桜田宏市長は「米やおかずは他の市町村が学生に提供している。嗜好品も含めた支援をしたい」と、その狙いを説明しているほか、今回の事業案に賛成の立場だった委員からは「学生たち、特に女の子たちはアップルパイを楽しみにしている。お米を食べない女の子もいる」との意見もあったという。

さらに、市長は今回の事業案に関して「アップルパイの販売事業者も経営が厳しい状況にある」との発言もしていて、そういった地元企業に今回の事業を通じて潤ってもらおうといった意味合いもあるようだ。

いっぽうで、今回のアップルパイ支給に反対する立場からあがるのは、やはり「税金の無駄遣いでは?」「特定の地元企業への利益誘導では?」といった声だ。

今回、配布の対象となる学生は約6,000人にのぼるといい、事業費の264万円をそれで割ると、1人当たり440円程度となるが、それが果たして妥当なものなのか。

先述の市内アップルパイ提供店のガイドマップを見てみると、アップルパイ一切れあたりの価格は100円台後半の安価なものから、素材にこだわった高価なものもあるなかで、だいたい200~300円台のものが総じて多い模様。それらと比較すれば、1人当たり440円程度というのはやや高価なようにも見えるが、当然ながら「事業費のすべて=アップルパイの代金」ではないワケで、その評価は分かれるところかもしれない。

さらに反対派からは、「地元りんご産業へのアピール狙いで若者救済は二の次」といった声や、なかには「小麦アレルギーの人はどうするんだ?」といった意見も。ただ、そういった批判に対して辟易している向きも多い模様で、「貰う立場で図々しい」「ありがたくもらえばいい」との声も多くみられるなど、議論は大いに紛糾している。

人口約16万7,000人の地方都市を大いに揺るがしている今回の議論だが、このことが影響して支援事業の停滞などといった事態を招かないことを、切に祈るばかりである。

Next: 「コロナ支援の名目が付くから、おかしな案に…」

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