「企業は株主のもの」ROE経営は何をもたらしたか
会社が株主のためにあるという考え方は、アメリカでは昔から徹底されていた。企業は株式市場から資金を調達するスタイルを基本にしていたので、株主に報いるというのは最優先事項だったのである。
企業が株主に報いているのかどうかは何で測るのか。「ROE」で測る。ROEとは、「株主資本利益率(Return On Equity)」を意味している。その会社が株主資本を使っていくら儲けたかを示す指標だ。
もっと分かりやすく言うと、「株主が投資した資金でいくら儲けが出たのか」を示す指標がROEだ。
株主は企業にカネを貸している。だから、株主は自分たちに報いる経営をしてもらう必要がある。経営者も株主に報いるために努力する。この構図で見れば、企業は誰のものか、はっきりと分かるはずだ。
企業は株主のものなのだ。
労働者は単なる「コスト」
企業はそこに投資している株主のものであるから、株主をどれだけ儲けさせるのかが重要であり、それをROEという指標で測っている。
優良企業とは具体的に言えばROEが継続して高い企業を指しており、労働者に報いているから優良なのではなくて、株主に報いているから優良なのである。
労働者はROE経営の中では単なる「コスト」でしかない。コストは常に削減される。つまり、労働者は繰り返し給料削減やリストラの対象になる。あるいは、安く働く外国人労働者に置き換えられる。
現代の資本主義はROE経営が生み出している。この仕組みが見えただろうか。
この、ROE経営はグローバル化した資本主義社会の「中核」となるものである。今後も「株主重視」の経営が続く。これは、当然のことながら株主の方が従業員よりも厚く報われることを意味している。
株主は自分たちの取り分をさらに増やすために、「もっと利益を、もっとコスト削減を」と経営者に強く迫る。そのため、経営者はコストの中で最も大きな部分である「人件費」の削減を恒常的に行う。
それが労働条件の悪化を加速させていき、非正規雇用者と外国人労働者を大量に生み出す元凶となる。
必死で働いるのに食べていけないという状況になっても、最初は往々にして「本人のせい」にされる。なぜなら、社会は全員が一緒に貧困に落ちるのではなく、まだらに落ちていくからだ。
若者、高齢者、障害者、女性……。社会の弱い部分からポトリ、ポトリと貧困に落ちていく。
しかしその時点では、まだ働いて食べていける人がたくさんいるので、「本人の生き方、働き方」が悪いようにしか見えない。だから、自己責任論がずっと続く。