円安でも輸出で稼げない日本
企業が人件費を削り、消費が縮小する中で、利益を上げた企業がその分支出を増やしてカバーできれば良いのですが、少なくとも日本の輸出については、このところ円安気味の環境の中でも稼げなくなっています。
年間80兆円の壁が越えられず、最近では円安の中でも輸出は減少しています。貿易収支も赤字が続くようになりました。
米国のGAAFAや中国の巨大IT企業群のような、強い競争力、成長力を持った企業が日本にはなくなり、唯一自動車で稼いできたようなものですが、その自動車も半導体不足、サプライチェーンの崩壊で、国内生産、輸出ともに大きく落ち込みました。
追い打ちをかけるように、部品の供給基地であった東南アジアがコロナの感染拡大で多くの工場が止まってしまいました。
そして、日本の輸出の最大の市場となっている中国経済が変調をきたし、世界貿易が縮小している分、日本の輸出にも大きな制約となっています。
中国の習近平指導体制が、経済よりも政治権力による統制、指導力強化に注力しているため、経済が大きな犠牲を受けている面があります。
期待の海外経済にも暗雲
習近平指導部は最近、子どもがゲームで遊ぶ時間を週末の3時間に限定したり、女性の化粧や男子のいでたちにまで口出しをして、統制を強化しています。マクロ経済に対しては、これまで中国経済をけん引してきたIT企業や不動産市場に規制をかけ、行動を制限しています。いずれも習近平主席に対抗する江沢民派、共青団系の企業が多いためです。
特に、このうち不動産の規制強化は、高くなりすぎた住宅価格にまで及び、10月の新築住宅価格はついに前月比マイナスとなりました。債務が巨額に膨らんでいるため、住宅価格が下落するようになると、資産価値の下落で債務が資産価値を上回る「デッド・オーバー・ハング」の状態となり。不良債権が拡大します。
日本の90年代にみられた現象で、バブル崩壊の資産デフレにつながります。
そうなると中国経済は国内の債務金融危機に陥るリスクがありますが、同時に米国が金融緩和の縮小から利上げに出ると、中国の債務返済がドル建て債を中心に苦しくなり、他の新興国でも資金の引き揚げから意図しない金融引き締めとなって経済が圧迫されます。
世界経済はこれまで以上に厳しくなり、日本の輸出には逆風が強まります。その分、内需の拡大に期待するしかなくなります。
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