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習近平が青ざめる中国経済の大失速。不動産バブル崩壊で日本と同じ「失われた30年」へ=勝又壽良

不動産バブルを延命させる劇薬投与

米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』(12月16日付)は、「中国経済の構造転換、容易ではない」と題する社説を掲載した。

この社説は、私が以上において指摘してきた点とほぼ同一であるので引用することにする。

1)不動産中心だった中国経済の構造転換が容易だと言う者はいなかった。そして今、それを裏付けるさらに多くのデータが出てきている。中国経済への圧力が強まっていることは、日を追うごとに明白になっており、それは習近平国家主席への圧力にもなっている。

2)現在の成長の鈍化が、よりバランスのとれた投資への移行の結果もたらされたものであれば、当面は健全かもしれない。しかし、中国当局者が最近、新たな一連の金融刺激策について協議していたことは良い兆候ではない。習氏は2022年に権力をさらに強固なものにしようと動いており、景気低迷の長期化リスクを回避する姿勢が一層強まるとみられる。

ここで、(2)についてだけコメントしたい。

現在の成長率低下が、住宅投資の落込みを反映し民間設備投資への切り替えという前向きのものであれば健全と言える。中国指導部は、渋る中国人民銀行へ圧力を掛けて、金融緩和を急がせている。GDPの落ち込みを回避すべく再び、住宅投資への誘因策を始めたい前兆と言える。これは、中国経済の立直しに役に立たないのだ。不動産バブルの禁断症状を和らげうるための「劇薬」でしかない。

こういう過程は、これまでも何回か繰返されている。不動産バブルで景気を延命させて、ついにその限界を突き抜けてしまったのだ。その証拠は、下記のデータで読み取れるであろう。

■中国の不動産開発融資残高(前年比)

2006年3月31日:37.8%(ピーク)
2008年12月31日:10.3%(ボトム)

2010年3月31日:31.15%(ピーク)
2012年3月31日 :6.30%(ボトム)

2015年3月31日:24.08%(ピーク)
2017年3月31日:7.41%(ボトム)

2018年9月31日:24.5%(ピーク)
2021年6月30日:2.8%(ボトム)

出典:ウインド 『ウォール・ストリート・ジャーナル』(2021年9月8日付)

上記データで「ボトム」を見ると、今年の6月末が前年比2.8%増と厳しく抑え込まれていることが分かる。ここまで融資残高が抑え込まれると、大抵の不動産企業は倒産危機を迎えるほかない。中国恒大が、白旗を掲げたのもこういう背景があった。

合計特殊出生率に対する危機感からバブル崩壊へ

しかし、ここまで不動産向け融資を絞った背景には、高騰した住宅価格を抑制しなければ、合計特殊出生率を押し上げられないという危機感に突き動かされた結果だ。

中国経済の潜在成長率は、人口動態のいかんに掛かっている。具体的には、2020年の合計特殊出生率「1.30」を引き上げる以外に方法はない。

こういう切羽詰まった中で、不動産バブル抑制方針を立てたはずだ。それが、単なる「住宅不況」の域を超えて、「不動産バブル崩壊」へと雪崩が始まったのである。

これに驚いたのが習近平氏である。土地売却収入減で地方政府の財源不足が顕著になり、地方政府は公務員給与を2~3割もカットし始める騒ぎに発展している。

すでに、22年の地方債発行の繰り上げを認める事態だ。そうでなければ、予算執行ができない局面に陥ったのである。「土地本位制」経済の弱点が100%現れている。

Next: 住宅建設へしがみつく習近平。世界覇権への道のりは遠のく一方

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