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電力需給“ひっ迫”騒動でSNS上では「原発再稼働」を巡る議論が過熱。“停電危機”が長引けば夏の参院選の大きな争点になる可能性も

政府は22日の電力需給が極めて厳しい状況だとして、東京電力および東北電力の管内に「電力需給ひっ迫警報」を出し、広く節電を呼びかける事態となっている。

22日の関東地方は、低気圧と寒気の影響で気温が下がり、場所によっては雪が降るところも。そのため暖房使用などによる電力需要が増えており、管内の電力の供給力に対する需要の割合を示す「電力使用率」が、午後1時台で東京電力管内において106%、東北電力管内で99%となっているという。

電力の供給力が大きく増える見込みは当分なし?

今回の電力需給ひっ迫だが、その原因としては3月にしては予想外の寒さにくわえ、今月16日の地震によって東北・東京エリアの火力発電所6基(計約330万kW)が稼働停止となっている状況も大きく影響しているようだ。

なかでも先日の地震の震源域に最も近い相馬共同火力発電の新地発電所では、輸送船から石炭を陸揚げする巨大な設備が地震の強い揺れで損壊。復旧には相当の時間がかかる見込みと報じられている。

いっぽうで国や電力会社も、今冬は電力需給の見通しが過去10年で最も厳しくなると以前から警戒しており、停止していた古い火力発電所を臨時で稼働させるといった警戒態勢を取っていたとのこと。

しかし、3月になれば暖かくなり電力需要も落ち着くと見越して、その警戒態勢を2月末で解除。そのことがここに来て裏目となってしまったようである。

このように、古い火力発電所までも稼働させないと電力需給がひっ迫する危機に陥りかねない、ギリギリの状況であるいっぽうで、世界的な脱炭素化の流れやそれに応じた政府による規制強化などの影響で、石炭火力発電所に関しては計画がここ数年で次々と頓挫しており、新設予定はゼロの状態とのこと。当分のところは、電力の供給力が大きく増える見込みがなさそうな状況なのだ。

先送りされ続けたエネルギー政策議論

地震で被害を受けた発電所の復旧が長引くことがあれば、今後たとえば冷房により電力使用料が増える夏などにも、同様の騒ぎが起こってもおかしくないような今の状況。それだけにやはりというべきか、SNS上では“原発再稼働”を巡る議論が大いに過熱する事態となっている。

東日本大震災時の原発事故以降、原発の再稼働に否を唱える意見が幅を利かすいっぽうで、最近では主に経済面などの理由で再稼働を容認する見方も少なくない状況。現に朝日新聞による原発再稼働への賛否を問う世論調査でも、近年は反対の割合が減っており、賛否の差がわずかになっているようだ。

そんな反対派からは、今回のような電力需給ひっ迫“騒動”を、世論を原発再稼働へと導くための、政府や電力会社によるブラフだとする声が。それに対して再稼働を容認する向きからは、その手の反応はお見通しだといった反応が多くあがっている状況だ。

いっぽうで今回の件に関しては、国民民主党の玉木代表による「本来なら国が責任を持って安全基準を満たした原発は動かすべきなのに、批判を恐れ誰も電力の安定供給に責任を持とうとしない現状こそ危機」とのツイートも、大きな反響を呼ぶ格好となっている。

これまで先送りに先送りを重ねられてきた感のあるエネルギー政策議論だが、唐突な警報と節電要請で多くの国民が戸惑う格好となった今回の一件を機に、そろそろまともに向き合うべしといった声も大きくなりつつある情勢。来る参院選は夏の暑い時季に行われるとあって、その最中に再びの停電危機……といった状況となれば、大いに取沙汰される可能性もありそうである。

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