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まじめに節電しちゃう国民が悪い?脱炭素と政府の甘えで「電力不足」が日本の“持病”に。脆弱なエネルギー政策が日本経済を破壊する=澤田聖陽

なぜこのような状況に陥っているのか?

なぜこのような状況に陥っているかという原因であるが、以下に記載する2つの要因がある。

・近年火力発電所の休廃止が相次いでおり、逆に火力発電の新設については脱CO2の流れの中、特に石炭火力発電所の新設は厳しい状況になっている。火力発電所の新設と廃止を電力供給量で見ると、2021~2025年度の5年間で1,444万kWが新設されるのに対し、同期間に運転に必要な費用を捻出できない石油火力を中心に1,885万kWが廃止される見通しとなっている。また2026年以降も881万kWが廃止される見込みであるが、新設の計画は今のところゼロとなっている。

・2011年の震災以降、一時すべての原子力発電所の稼働が止まったが、2021年末時点で再稼働したのは9基にとどまっている。震災時点で原子力発電所は54基あり、電力需要の約30%を賄っていた。震災後に21基の廃炉が決定しており、現状では9基以外の再稼働についても目途が立っていない状況である。

現在の電力は発電方法別に大きく3つに分けられる。

火力発電(石炭、石油、LNG)、原子力発電(水力を含む)、再生可能エネルギーである。

日本は震災の影響で、この3つのうち、原子力発電による電力供給が難しい状況になっている。

震災後は、減少した原子力発電分を、火力発電によって補ってきたわけであるが、ここにきて脱CO2の世界的な流れとエネルギー価格の上昇が火力発電を増やす足枷になっている。

エネルギー政策を歪ませる数々の障害

特に石炭火力については、CO2排出量が多いということで、先進国では新設を行わないと表明する国が多くなっており、金融機関も石炭火力の新設に対しては融資の対象としないというところも多くなっている。

火力発電は再生可能エネルギーに切り替えていくべきであるという意見もあるが、再生可能エネルギーはベースロード電源にはならないので、火力発電や原子力発電の代替にはなり得ない。

再生可能エネルギー推進派の中には、再生可能エネルギーがベースロード電源になり得る、またはベースロード電源不要論を唱える識者も一部でいるが、近年テキサス州での寒波による100名以上の死者が出た事例なども見れば、このような論が間違っていることは明確であろう。

再生可能エネルギー推進派が一番多いのはEU諸国であるが、その中でもドイツは再生可能エネルギーに大きく傾斜している。

しかしながらドイツはフランスから原子力発電によって発電された電気を買っているという事実がある。

またロシアのウクライナ侵攻によって、ロシアからのLNG輸入に頼っていたドイツのエネルギー政策の脆弱さもあらわになった。

ロシアに依存しないために、ロシア以外の国からの化石燃料の輸入を増やすのではなく、より再生可能エネルギーを推進して、その比率を増やすべきだという意見もドイツでは一部であるようだが、これは危険でしかないと考える。

前述のとおり、再生可能エネルギーはベースロード電源にはならず、大きな災害をもたらすだろう。

ドイツはロシア以外からのエネルギー輸入の供給網(具体的には米国や中東だろう)を早急に整備するのが喫緊の課題であるのに、脱CO2という足枷によって、あまり進められていないように見える。

それどころか原子力発電の完全撤廃まで決めてしまっており、これは後で大きな代償を払うことになるだろう。

Next: 「電力不足」が日本の持病に。脱CO2の一時停止が必要

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