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ゴーンCEOの見つめる先~日産はなぜ三菱自動車を買収するのか?=栫井駿介

自動車業界は技術開発競争へ

そうなると最後に残るのが販売台数の増加です。日産は中期経営計画の中で、2016年度までに世界市自動車販売台数シェアを8%以上にすることを目標に掲げています。しかし2014年度末で6.2%と、思うように進んでいません。

また、シェアを8%にしたところで、価格決定力を持つほどの大きさではありません。規模を追求するということは、それだけ大きな設備投資を必要とし、リスクを抱えることになります。車種の多様化が進む自動車産業は直接的なスケールメリットが必ずしも働きやすい構造ではありません。

しかし、自動車業界は大きな転換点に差し掛かっています。アップルマイクロソフトグーグルなどの異業種までもが参入する動きが見られるように、自動運転を中心とするあらゆる業界を巻き込んだ技術開発競争の様相を呈しているのです。

「販売台数1000万台」は必要条件

技術開発にはそれなりの金がかかります。しかし、仮に先進的な技術を開発したところで、その技術を乗せる自動車台数を確保できなければ、投資に対するリターンをあげることが難しくなってしまいます。そう考えたときに、技術開発競争で勝ち残っていける企業はより規模が大きな企業です。

世界で最も自動車販売台数が多いのはトヨタグループ(トヨタ、ダイハツ、日野)です。フォルクスワーゲン、GMがそれに肉薄しています。これら3グループの販売台数がそれぞれ約1000万台です。続く日産・ルノーに三菱自動車の約100万台を加えることで、「1000万台グループ」の仲間入りを果たすことができるのです。

【出典】MOVY

【出典】MOVY

日産と三菱自動車は電気自動車(リーフやアイ・ミーブ)を先掛けて開発するなど、技術的な共通点が多いといえます。共同開発を進めることで、技術開発競争に勝ち抜くことがゴーン社長の目的ではないでしょうか。

この買収が日産に与える影響を現段階で推し量ることは難しいと考えます。日産としては必要な投資を行うための前提条件をそろえただけに過ぎません。一方、三菱自動車にとってマイナスになる要素は少なく、燃費不正前よりも状況は改善しています。

7月にはトヨタがダイハツを完全子会社にすることが決定し、既に共同開発の動きが進んでいます。技術開発競争を契機とした再編が続く自動車業界からまだまだ目が離せません。

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バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問』(2016年5月15日号)より

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【毎日少し賢くなる投資情報】長期投資の王道であるバリュー株投資家の視点から、ニュースの解説や銘柄分析、投資情報を発信します。<筆者紹介>栫井駿介(かこいしゅんすけ)。東京大学経済学部卒業、海外MBA修了。大手証券会社に勤務した後、つばめ投資顧問を設立。

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