やはりというべきか、日本のインフレが懸念されたように変節を見せています。日銀が考える「年末までに収まる」一時的な物価上昇ではなく、値上げ品目が拡大し、長期化が懸念されるようになりました。しかも、生活周りの必需品が値上がりし、消費者はいよいよ逃げ場を失いつつあります。(『 マンさんの経済あらかると マンさんの経済あらかると 』斎藤満)
※有料メルマガ『マンさんの経済あらかると』2022年8月22日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。
プロフィール:斎藤満(さいとうみつる)
1951年、東京生まれ。グローバル・エコノミスト。一橋大学卒業後、三和銀行に入行。資金為替部時代にニューヨークへ赴任、シニアエコノミストとしてワシントンの動き、とくにFRBの金融政策を探る。その後、三和銀行資金為替部チーフエコノミスト、三和証券調査部長、UFJつばさ証券投資調査部長・チーフエコノミスト、東海東京証券チーフエコノミストを経て2014年6月より独立して現職。為替や金利が動く裏で何が起こっているかを分析している。
「2%台の物価上昇」報道はミスリード
先週金曜日の19日に発表された7月の全国消費者物価(CPI)について、各メディアはコアの数字前年比2.4%の上昇を紹介、4月から4か月連続で2%台の上昇となり、政府日銀の2%の物価安定目標を上回ったと報道しました。
それでも日銀の考える物価上昇の形とは異なるので、引き続きYCC(イールドカーブ・コントロール付きの金融緩和を継続する姿勢を伝えています。
この報道は不正確で、世論をミスリードする可能性があるので要注意です。
日銀は物価上昇の「基調」を見るために、天候などで変動しやすい生鮮食品を除いた「コア」の上昇率を注視していますが、消費者は生鮮食品を買わないわけにはいかず、この生鮮食品がこのところ高い上昇を続けています。7月もこれは前年比8.3%上昇しています。
つまり、報道される数字より現実のインフレは高いのです。従って、7月の物価上昇はコアの2.4%ではなく、生鮮品も含めた2.6%を報じるべきです。
実際のインフレ率は「3.1%」
さらに、この数字の中には実体のない「仮想」の支出費目「持ち家の帰属家賃」が含まれていて、この上昇率がゼロで、これが指数全体の約16%も占めています。この架空の家賃を除くと、現実の物価上昇率は3.1%になります。
これが実態的なインフレ率で、現に総務省も厚労省もこれで実質値の計算をしています。
つまり、日本の現実的なインフレ率はすでに3%台になっていて、2%台とは国民の受ける印象が異なってきます。良心のあるメディアはこの3%台のインフレ率を紹介すべきです。
さらに、日銀の考える物価上昇の形、つまり賃金上昇を伴ったものでないから金融緩和を続けることが、消費者にどれだ負担になるのか、わかって報道しているのでしょうか。
日銀の緩和で賃上げが進むと考えるのは、日銀の傲慢です。