主役がエネルギーから「食料」などにシフト
7月のCPIの内容から見ると、日銀の言う「インフレは一時的」の認識も崩れそうです。
それはインフレの中身、主役が変わろうとしているからです。日銀はこれまでインフレの主因は資源価格高、穀物価格高と、生鮮食品の上昇で、原油など資源高は前年比では次第に減衰し、生鮮品は上がるときもあれば下がるときもあり、2%のインフレは年内に終焉する、とみています。
そしてこれを明示するために、展望リポートでは今年のコアインフレ予想2.3%とともに、コアコアは1.2%と予想。エネルギー、生鮮食品を除けば依然として低いインフレが続くという見方を提示しました。しかし、7月のCPIはこれをぐらつかせるものとなりました。
7月のインフレ率2.6%のうち、エネルギーは16.2%上昇して全体をまだ1.22%押し上げていますが、食料品の押し上げ寄与が、生鮮食品の0.32%に対して、それ以外の一般食品が3.7%上昇して全体を0.83%押し上げています。食料全体では1.15%と、エネルギーに近い押し上げ圧力に高まってきました。
また物価上昇を財とサービスに分けると、財が5.4%高、サービスがマイナス0.2%となっています。この財のうち、買いだめ、買い控えが利かない非耐久消費財が6.3%上昇して、これだけで全体を2.34%押し上げています。エネルギーはガソリンの元売りに補助金を出してガソリン価格が170円程度に収まるよう、抑えていますが、逆に原油価格が下げても補助金が減るだけでガソリン価格は下がりません。
電気、ガス代金は遅れて価格設定するので、電気代はさらに値上げが予定されていて、しばらくは上昇こそすれ、下落はありません。従ってエネルギー価格の上昇率が前年比で減衰することは当面期待薄です。
その一方で食料品は8月、10月に大量の値上げ品が控えていて、この上昇ペースは加速しそうです。8月以降は食料が最大の押し上げ要因となり、インフレの主役となります。
日銀は22年度のコアコアを1.2%上昇と予想していますが、7月の前年比がすでに1.2%上昇で、この半年では年率2.8%、直近3か月では年率3.2%の上昇に急加速しています。
つまり、エネルギー、生鮮食品を除いても今年のインフレは3%前後に高まる懸念が高まっています。これは簡単には沈静化せず、日銀は次回以降の展望リポートでコアコアの予想を大きく引き上げると見られます。
コロナの5類変更でインフレは4%超に
7月のCPIでは半分を占める財が5.4%上昇、残る半分のサービスが0.2%下落しています。このうち、サービス価格が今後上昇する可能性が高まっています。
サービスのうち公的サービスが0.7%下落していますが、これには医療・福祉関連サービスの1.5%下落が寄与しています。このうち医療サービスについては、コロナの扱いが5類に変更になると、公費負担がなくなり、患者負担が大きくなります。この医療サービスが大きく上昇すると見られます。運輸サービスも来年春に向けて東急など私鉄の運賃引き上げが予定されています。
また一般サービスは0.1%の下落ですが、これには通信費の7%下落が利いています。これは今後次第にマイナスが消えてゆきます。
そして現在ゼロとなっている民間家賃、帰属家賃も、民間機関の調査によるとマンションの賃貸料が一部で上がり始めたと言います。配送料も、これまでの「送料無料」が縮小し、有料化しています。