「ゾンビ企業」淘汰で起こる大量失業
そして中国は今回、構造改革の一環として、存続の見込みがない「ゾンビ企業」の整理淘汰を進める方針を打ち出しました。その過程で、石炭、鉄鋼でのゾンビ企業整理だけで180万人もの失業者が出ると言われます。
このゾンビ企業の整理淘汰によって、そこに貸し付けていた資金の回収ができなくなるうえに、大量の失業者対策に資金が必要になり、これがまた生産性の低い融資に頼らざるを得なくなります。
このため、構造改革がなかなか進まず何年もかかる間に中国経済の非効率化、弱体化が進むリスクがあり、それがまた不良債権を高める悪循環となります。
銀行融資に頼る中国の経済対策ではどうしても銀行への負担が大きくなります。市場原理が働かず、政府の裁量で融資が拡大してきただけに、これが行き詰まっても「膿」が出ないまま、矛盾を抱え込む形になっています。
そこへ政府が人民元の国際化を急いだために、IMFから規制緩和、西側の規制、ルール適用を求められるようになりました。
この秋が危ない中国経済
今年の10月以降、人民元がSDR(IMFの通貨引き出し権)の構成通貨に組み入れられますが、これに伴って中国は資本や為替の自由化を進めることになります。これは中国の金融制度に対しても、西側のルール、規制が適用される方向となります。
つまり、不良債権の定義から、銀行の自己資本規制に至るまで、BIS(国際決済銀行)の規制に縛られるようになります。
このルールをいきなり適用すれば、中国の銀行は資本不足で行き詰まるところが多いはずで、その前に融資の抑制、不良債権処理を進めるにしても銀行への負担が大きくなります。
この秋に向けて、中国が西側ルールに適用しようとすれば、それが結果的に銀行の不安定化、信用不安につながるリスクがあります。
中進国の段階ですでに過大な債務問題を抱え込み、経済が行き詰まる時期に、中国は人民元の国際化を急いでしまい、背伸びしたツケが銀行圧迫という形で現れることになります。
この秋には、これが信用不安を引き起こして中国経済を危機に陥れるリスクが高まる可能性があります。IMF、米国が目をつぶってルール適用の先送りを認めてくれるかどうか。
『マンさんの経済あらかると』(2016年5月16日号)より
※太字はMONEY VOICE編集部による
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金融・為替市場で40年近いエコノミスト経歴を持つ著者が、日々経済問題と取り組んでいる方々のために、ホットな話題を「あらかると」の形でとりあげます。新聞やTVが取り上げない裏話にもご期待ください。