70代になる頃には貯金も消えて年金で細々と生きる
政府は「老後資金に2,000万円を用意しろ」と言う。しかし、65歳以上・2人以上世帯の貯蓄額は中央値で見ると1,588万円である(総務省:家計調査報告−貯蓄・負債編 令和3年 平均結果 2人以上の世帯)。
貯金の取り崩しが月10万円とすると、年間で120万円が消えていくことになる。10年で1,200万円が消える。13年目には貯金は払底してしまう。
そもそも、この1,588万円の中央値というのはあくまでも平均であって、実際には中央値ほどの貯金を持っていない世帯の方が多い。それどころか、500万円もないという高齢者もザラにいる。
その場合、貯金の取り崩し額は極限まで切り詰められて貧困生活が続くことになるのだが、どのように節約しても70代になる頃には貯金も消えて、まったく足りない年金で生きるか死ぬかの極貧に直面せざるを得ない。
このような「何も持たない高齢層」が1,000万人以上の単位で出現するのがこれからなのだ。
「マイホーム」が足かせになることも
では、不動産などの資産を持っている高齢者は他人事なのかと言えば、そうとも言えないのが、今の日本社会である。
日本の高齢層は今もまだ不動産が役に立つ資産だと思っている人もいるのだが、今後の少子高齢化時代を考えると、不動産はよほどロケーションに恵まれた場所でないと資産にならない可能性の方が高い。
特に地方の惨状は目を覆うばかりで、不動産はまったく資産にならず〝負動産〟と自嘲されている。30年も住宅ローンを組んでやっとそれが自分の物になったとき、資産価値の消えた土地とボロボロの建物がそこに残されているだけになる。
バブル期、都内から2時間以上も離れたマンションを買った人々も、ローンが終わる頃はマンションが老朽化し、改修費が出せないことで「スラム・マンション」となってしまうような場所も出てきている。
さらにバブル期に建てられたリゾート・マンションも人口減と老朽化によって見捨てられており、今や50万円以下で売っているようなマンションすらもある。
不動産を売ったら現金が作れると思って買った不動産も価値を失うのが成長もなくし、子どももなくした日本の現状である。
このままでいくと今後の日本は極貧の高齢者で埋め尽くされる国となる。あまりにも絶望的な状況だ。