日本は企業だけが「お金を溜め込む」歪な社会
こういったことを解消するためには賃金の上昇のほかないのですが、インフレ時にはその値上げ分を企業が負担することによって売り上げ低下を防ぐ、などということが公然と行われている、状態だと思います。
今回のインフレも待っていれば下がれば、ますます、企業の抱えている利益が従業員に回らず、ますます企業内で留保されていくのであろうな、と思います。
日本の最大の欠陥は、岸田さんが言った通りで分配にあり、あまりにも企業を優遇していたのです。たとえばドコモなどがその典型で、政府が料金を下げろ、というと公然と反発をする、携帯は今や社会的なインフラになっており、そして許認可事業であるのにも関わらず、メディアを通じて反発をする、裏でやればいいものを。結果、ドコモは金融サービスの不誠実さでつぶされたのです。表向きは、NTTに吸収合併になっていますが実態は事業免許取り消しになるので吸収合併という形で面子を保ち、潰されただけの話です。
日本のおかしさというのは統治形態で、あまりにも企業が優遇されるので勘違いしている企業が多いとは思います。今回の電通の問題にしても同じ話で、政府のオリンピック委員会よりも、元電通の方が偉いような状態ですから、起こるべくして起こった事件のように感じます。
企業の経営者からすれば売り上げ「増」が自分たちの生命線であり、それによって自身の雇用を確保しているだけの話ですから、売り上げが減るということは自身のクビに直結するわけですから、料金を下げろ、なんて言われると公然と反発するわけです。それを平気で言い放つ神経がおかしいのです。気持ちはわからなくはないですが。
やはり政府が大規模な借金状態、消費者は賃金が上昇せずに常に青色吐息状態、企業は莫大な社内留保を担保。この流れが固定してしまっているのがおかしいのです。
たとえば米国ではつい半年前までは企業が絶好調で、消費者が極大不振状態でした。現在は企業が大不振で、消費者に光がさしているように資産やマネーの循環によって生きているわけです。
日本は政府と消費者がずっと貧乏なまま、企業がその利益を外部に転換しようとしない、おかしな構造なのです。お金は循環するから景気がよくなるもので、ある主体だけに、お金が滞留するのは社会全体にとって非常に不健全な状態です。
なぜバーナンキ氏に経済学賞?
以前にも少しお話しましたが、こういった大きなショック、不景気があると、金融政策には流れがあります。バーナンキが経済学賞を受賞したらしいですが、その流れを作ったのはバーナンキです。最近、CDS(クレジット・デフォルト・スワップ)なんて時代の遺物が注目されましたが、CDSなどはバーナンキの失敗の代表作のようなもので、差益を中心に考える投資家にとっては非常に有益な商品ですが、社会にとっては害悪、他ならないものです。
CDSというのは株価に対する保険で、A社が倒産しようというときにCDSという保険を購入するのです。つまり投資家は株価では損を出すけれども、保険というCDSがそれを保証してくれるという商品です。
ですからリーマンのような巨大不況のときにも流動性不足が起こらないとバーナンキが主張をしたのですが、蓋をあけてみてもAIGの倒産でリスクは回避できず、儲かったのは一部の投資家だけでした。
要は保険をかけても、流動性不足などのリスクは回避できない、それをバーナンキが推奨をしていたのですから噴飯ものです。
政策実行者としては名を挙げたバーナンキですが、理論はかなりおかしなものがあり、なぜ、彼が経済学賞なのか私には理解できません。
また話が違う方向に行きましたが、その流れが以下の通りになっています。
↓
各国での金融政策の発動
↓
その際に最大規模は米国 → ドル安 金利安
↓
順調にアメリカ景気が回復 → ドル安 金利安の撤回
↓(今、ここです)
アメリカ以外の国は金融緩和拡大 → ドル高金利高→他の国は通貨安金利安を維持
↓
諸外国も景気回復
これが大規模な不景気や事件が起こった際の流れになります。
1年目に徹底的なドル安が敢行され、結果、アメリカ経済が回復します。そうすれば、アメリカは現在のようなドル高政策に転換します。
世界経済はアメリカ経済が立ち直れば、ある程度の回復を目指すことができますので、ほかの国は、アメリカよりも1年程度、緩和を延長させる、それによって世界の景気がよくなっていくというのが道筋というのを示したのがバーナンキだったのです。あるいはイエレン財務長官になります。
ところが、今年の2月のウクライナ侵攻によって「インフレ」が発生してしまったのです。