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「危うい」韓国半導体、日本が国策で復活へ。日本・台湾・米国の共同戦線で次世代半導体の覇権を握る=勝又壽良

習近平3期目で強まる日台半導体協力

台湾は、全島が半導体工場で埋め尽くされるほど、半導体生産に力を入れている。台湾政府の強力な支援がある結果だ。

だが、中国の「台湾統一」という政治目標は、習近平氏の中国国家主席3期目によって現実課題に急浮上している。先の共産党大会では、「台湾統一」を党規則に書き込んでいる。平和統一が困難であれば、「軍事統一」を振りかざすであろう。

習氏の3期目の任期は、2027年までである。となると、これからの5年間に中国が強硬策を取らない保証はないのだ。

こうして、台湾の「地政学リスク」が大きくなってきた。そこで、この7~9月期の利益で世界一の半導体メーカーになったTSMC(台湾積体電路製造)は、日本と一層の関係強化に踏み出すという情報が、『ロイター』や『ウォール・ストリート・ジャーナル』から相次いで報じられているほどである。

TSMCは、すでに日本(熊本県)で半導体工場を建設中である。また、東京大学との共同研究をベースに筑波で研究センターを開設した。TSMCは、日本との関係が深まってきたので、日本での生産基地をさらに増やす可能性を探っている、というのが前記情報の主旨である。

韓国は、日本の半導体産業を見くびる姿勢だが、これは大間違いである。日本には非メモリー型半導体技術が温存されているのだ。メモリー型半導体では、1990年代の日米半導体戦争で規制を加えられたことと、米国主導の超円高に翻弄されて世界一の座を失った。

このタイミングを生かして登場したのが、韓国半導体である。つまり、韓国は実力でなく日本衰退で浮上したのが真相である。日本は現在も、半導体製造設備や半導体素材で韓国を圧倒している。それが、証拠と言えよう。

TSMCは、前述の通り日本の総合的は半導体の実力に注目した。特に、半導体製造技術の「後工程」では今なお、日本が絶対的な優越性を維持し続けている。半導体の製造工程は、「前工程」と「後工程」に分かれる。TSMCは、この「後工程」の優秀さを買っているというのだ。

もともと日本は、「前工程」と「後工程」で優れていたが、グローバル化経済で「前工程」を海外進出させた。この結果、海外での「前工程」が発展し、日本は「後工程」に磨きをかけざる得なくなった事情がある。

オールジャパン体制挑む半導体の失地回復

今年の6月、茨城県のつくば市にある経産省関係の産業技術総合研究所(産総研)の一角に、「TSMCジャパン3DIC研究開発センター」が開所した。日本政府が主導してTSMCを誘致したものだ。TSMCと日本の産学が共同し、半導体の「後工程」に関する研究開発を同センターで進めるのが目的である。

この研究センターは、東京大学とTSMCが発表した先端半導体技術の共同研究のための提携を具体化したもの。日本の半導体材料メーカーの約20社がパートナー企業として参画した。TSMC以外では産総研、東京大学なども含めた「オールジャパン」の顔ぶれだ。TSMCが、この研究センターの成果に期待するのは「後工程」の「3次元実装」と呼ばれる手法という。

「3次元実装」とは、半導体チップを縦に積み上げることで、横に並べたときよりも面積が小さくなる。半導体チップ同士を結ぶ配線も短く済むのだ。処理能力や電力効率が上がるので、次世代半導体を実現できる大きな夢に繋がっている。これが実用化されれば、次世代半導体で日本が大きな地歩を築ける可能性が生まれる。日本にとっては半導体の「失地回復」でまたとないチャンスが訪れたのだ。「後工程」分野では、日本メーカーしか持っていない技術がある。ますます、日本の独壇場になろう。

経済産業省は昨年6月、半導体の生産・供給能力確保などを盛り込んだ「半導体・デジタル産業の新戦略」を発表した。海外のファウンドリー(半導体受託製造)との合弁工場の設立などで国内製造基盤を確保するほか、次世代製造技術の国産化を進める。半導体産業は、米中対立を背景に経済安全保障上の重要さが増しており「国家事業として取り組む」と位置付けたのだ。

これに沿って今、着々と手が打たれている。

Next: 「日米半導体共同戦線」で出番を奪われる韓国

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