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「危うい」韓国半導体、日本が国策で復活へ。日本・台湾・米国の共同戦線で次世代半導体の覇権を握る=勝又壽良

円相場が下落するなか、韓国の総合力が日本を上回るとした「日本対等論」が韓国メディアで広まっている。韓国が有頂天になっているのは、好調な半導体生産によるものだ。しかし、台湾・米国・日本による共同体制で半導体生産の勢力図は塗り替えられ、韓国は地に落とされる可能性が高まっている。(『 勝又壽良の経済時評 勝又壽良の経済時評 』勝又壽良)

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※本記事は有料メルマガ『勝又壽良の経済時評』2022年10月24日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にご購読をどうぞ。当月配信済みのバックナンバーもすぐ読めます。

プロフィール:勝又壽良(かつまた ひさよし)
元『週刊東洋経済』編集長。静岡県出身。横浜市立大学商学部卒。経済学博士。1961年4月、東洋経済新報社編集局入社。週刊東洋経済編集長、取締役編集局長、主幹を経て退社。東海大学教養学部教授、教養学部長を歴任して独立。

韓国メディアで広がる日本対等論

最近の韓国は、メディアに「日本対等論」がしばしば登場する。韓国の総合力が、日本を
上回るというのだ。例えば、次のようなものがある。『中央日報』(10月19日付)のコラムの一節である。

「韓国は100年前の無気力な国ではない。韓国人が日本人より多くの月給を受け、第4次産業革命のゲームチェンジャーとなった半導体強国であり、新興防衛産業輸出国であり、文化ソフト強国だ」としている。この裏には、円相場が1ドル150円前後と急落していることで、胸の溜飲を下げていると見られる。「隣家の不幸は喜び」という心境だろう。

円急落は、日米金利差の拡大によるものと、世界的な資源価格高騰による貿易赤字が理由である。敢えて利上げせず、消費者物価の上昇を「待っている」のは、来春の3%以上の賃上げを実現して、「所得主導」経済へ軌道を移す戦術である。千載一遇のチャンスを生かすのだ。この裏には、来年の急激な円高反転を見込んでいる点もある。

有頂天の韓国に落し穴

韓国は、こういう舞台裏を理解せず「日本経済沈没論」で拍手喝采している。中でも、前記のコラムでは、韓国が「第4次産業革命のゲームチェンジャーとなった半導体強国」と自画自賛している。本当にそうだろうか。2019年7月、日本が韓国への半導体有力3素材の輸出手続きを強化しただけで、大々的な「反日不買運動」を始めた。その上、文大統領(当時)は、「2度と再び日本に負けない」と宣言するほどだった。

韓国は、日本の輸出手続き規制をダイレクトな輸出規制と取り違えた。韓国の必要量は、従来と同様に日本の輸出で確保しているのである。韓国が、このように空騒ぎした背景には韓国半導体に根本的な脆弱性が存在するからだ。

韓国は、確かに汎用品である「メモリー型半導体」で世界一の生産国である。だが、半導体の製造設備や素材は輸入依存である。半導体の製造技術だけで世界一の座にあるだけなのだ。その製造技術も、日本からの窃取であったことは隠せない事実だ。基礎技術のない韓国が、奇跡的に「メモリー型半導体」で急成長できた裏には、日本を踏台にしていたのである。こうした制約条件のために、韓国半導体は今も「非メモリー型半導体」で遅れをとっている。

世界の半導体は、通信技術上の「4G」(第4世代)から「5G」(第5世代)への移行に合わせ、レベルアップが求められている。「4G」では、モバイル機器が拡散したのでメモリー需要が急増した。つまり、メモリー型半導体が主流であった。だが、「5G」になると、VR(仮想的空間を現実化する)や、AR(仮想的空間の情報を現実世界に重ね合わせる)などが主流になる。半導体はこれに合わせて、非メモリー型半導体の世界へ移行する。こういう大きな転換期に、韓国半導体はスムーズに移行できるのか問われている。

いささか、小難しい技術論に触れたが、ハイテクの世界は足踏みせず、絶えず新しい分野を求めて発展し続けていることを強調したに過ぎない。韓国は、こういう大きな半導体の流れにうねりが起こっているほかに、世界的な半導体再編の波が訪れていることに無頓着である。韓国の「半導体世界一」が、ずっと続くという幻想に浸っているのだ。

世界的な半導体再編の波は、米中対立が始発点である。米国は、中国の軍事的な台頭を抑えるべく、戦略技術である半導体に関わる全般的技術の中国流出を断ち切る大胆な方針を実行に移している。具体的には「チップ4」の形成に動き出している。日米韓台4ヶ国が、半導体生産で共同戦線を張ろうという狙いだ。

韓国は、「チップ4」に参加するのかまだ不明である。中国で半導体生産をしているほかに、半導体の対中輸出が6割と多いからだ。こうした韓国の中途半端な姿勢が、日米台に比べて目立つ。台湾も中国へ半導体輸出している。台湾が、躊躇なく「チップ4」へ参加したのは、輸出する半導体が受注による非メモリー型半導体であるからだ。韓国は、メモリー型半導体で汎用品であるから、他の半導体メーカーに代替されるリスクを抱える。中国への輸出減を恐れているのだ。

「チップ4」では、非メモリー型半導体への取り組みが重要なものになる。韓国が、仮に「チップ4」へ参加しなければ、日米台がスクラムを組んで世界最強半導体にのし上がる可能性が強まる。韓国は、取り残されるのだ。

Next: 習近平「3期目」決定で台湾侵攻に現実味。強まる日台半導体協力体制

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