<理由その2:日本の消費者は価格に厳しく、値上げしづらい>
じゃあ何が起きてるのかというと、日本の消費者の特性が非常に大きいと私は考えているのです。とにかく日本の消費者は(価格に)世界一厳しいと言われているのです。
「物に対する要求水準」というのも高いですし、価格が少しでも上がると、もう買わないみたいなことになるのです。
<高齢者が多い>
(その理由として)まず1つは高齢者が多い。高齢者は先が不安で、もう年金しかない。年金暮らしの中で、高額商品買うかと言われると、「ちょっとそこはやめておこうかな」となることが多いと思います。
ただ一方で、日本の高齢者はお金を使わないで、年金すら貯金する状況なのです。実は平均して2~3,000万円貯金を抱えたまま亡くなってしまうことが多いという事実もあるのです。それが積もり積もった結果、日本国民の金融資産は2,000兆円を突破してしまったというところがあります。
<自国内での競争が激しい>
さらには価格が上がらない要因として「自国内での競争が激しい」ということがあります。かつて日本のGDPそのものが成長していた時代は、どんどん企業がたくさん現れて、その一つ一つがそれなりにやっていたわけです。
自動車メーカーなどを思い浮かべて頂ければわかると思います。日本だけ見ても、トヨタをはじめホンダ・日産それから三菱・マツダ・スバルと様々なメーカーが存在します。世界をみるとそんなたくさんのメーカーはありません。
日本で何故それだけ自動車メーカーがあるかというと、1つは生産の強さがあったことがあるかもしれません。もう1つは、日本国内にそれだけの市場があったからです。
しかし今、市場が増えないという中でどうしても買ってもらおうと思ったら、ある程度価格競争にならざるを得ない。逆に言うと、消費者の皆さんはこの価格競争で、価格が下がる恩恵を受けられていることになるわけです。
<経済格差が小さい>
そして(理由の)3つ目として考えるのが、経済格差が小さいことです。
海外いろんな国に行きますと、やはり本当に貧困層からすごいお金持ちまでいます。例えば価格を上げますというときに、この価格だったら買わないという層の人たちがもちろんいます。ただ下から上の層が非常に厚いので、値段を上げても買ってくれる層がいるのです。
ところが日本は、上から下の差がキュッと(縮まっています)。「1億総中流」と言われていた時代もありましたが、かなり狭いです。
実際に給与水準がそこまで差が狭いとは言いません。ただ意識としては、やはりみんな中流意識が強いのです。
逆に言うと、ちょっと値段が上がるとみんなの中で「あれ?あそこちょっと高いよね」という考えがインプットされてしまって、みんなが途端に買わなくなる。
少なくとも、実際そうなのか分からない部分もありますが、企業はそういう思い込みをしているのです。だから価格がなかなか上げられないというのが、日本企業の弱いところだと思います。