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「円安=国力低下」の嘘。日本が“安い国”になった3つの理由、競争力復活を見据えて個人がやるべきこと=栫井駿介

1人当たりGDP

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ここで注目したいのは「生産」です。誰が生産するのかというところを考えてみたいのです。

その国全体のGDPですと、当然人口が多いところ。ここで言うならば、中国とかインドが人口の多い国ですから、大きくなるのはある意味必然です。

一人一人の豊かさを表す指標としては、1人当たりGDPが用いられます。

この1人当たりGDPを見ますと、日本はこの黒い線です。1980年頃18位~19位だったものが、どんどんバブルの頃に上がりまして、一番ピーク1996年には9位でした。しかしそこからまた下がりまして、直近で26位まで下がって、1人当たりGDPを見ますと韓国より下になってしまっているわけです。

高齢人口推移

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大事なのは「1人当たり」というところです。1人当たりの構成比を見ていかなければいけません。

というのも日本は、高齢人口が世界で最も高い国です。

先ほど見ていただきましたGDPの推移。この95年から現在に至るまで、ほとんどGDPが成長していないと言いました。

この間に何が起きているのかというと、高齢人口の推移を見ますと一目瞭然です。赤い線が日本なのですが、高齢者の人口割合が急激に伸びているのです。

まさに団塊の世代が高齢者に差し掛かっていく、そういう時代ですが、一気にトップに躍り出ました。

この高齢者が増えるということは、何を意味するのかというと、先ほどGDPの定義で言いました生産活動を行うのは、やはり主力は30代40代50代という比較的若い人。言い換えると生産年齢人口の人たちです。

しかしそういった人たちの割合が下がって、高齢者の割合が増えていくということは、リタイアする人(が増えてきます)。

高齢者の中には、当然リタイアする人もいるでしょうし、リタイアしないにしても再雇用などで、生計を立てる人たちが多いわけです。何が起きるのかというと、人口に占める生産をしている人の割合が減ってくるのです。

従ってそういうところを考えますと、高齢者が増えたらGDPが上がらない。単純に人口で割ったときの1人当たりGDPが下がってくるというのは当然です。

つまりその1人1人の働き盛りの人が、生産している数字を表す。1人当たりGDPは必ずしも、それを表しているわけではないのです。

急激な下落というのは、まさに高齢人口の増加というところにリンクしているわけです。

生産年齢人口あたりGDP

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では何の数字を見ればいいかというと、生産年齢人口です。働き盛りの人がどれだけ生産をしているのか、付加価値を生み出しているのかを見ないといけません。

そこに立ち返りますと、(2017年までの資料ではありますが)こういった日銀の資料があります。日本がブルーの線です。

生産年齢人口当たり、働き盛りの一人当たりの実質購買力平価GDPを見ますと、すごく良かった頃(1980年の頃)実は一人当たりの生産性は、日本・米国・英国・ドイツ・フランス・イタリア・カナダという中でも、必ずしも高くなかったのです。

そこから生産性というのですか、1人あたりの部分では段々上がってきます。実はアメリカが確かに突出してはいるのですが、その他ヨーロッパ・カナダの国々となんら遜色ないぐらいになっているのです。

むしろ深刻なのはイタリアです。1人当たりの線が伸びないのは、イタリアになっています。

つまり、日本の1人当たりで見たときの、競争力がないかというと、これを見る限りそうではなくて、確かに国全体のGDPは伸びていない。しかしそれは、基本的には高齢人口の割合の増加によるところが大きいと考えます。

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