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なぜGDP減少のしわ寄せを労働者ばかりが低賃金で背負うのか?政府ができるのにやらない2つの解決策=斎藤満

デフレーターの差に象徴

交易利得の変化は交易条件(輸出価格/輸入価格)の変化によると説明しましたが、これは国内ビジネスに置き換えると、輸入価格の上昇が国内の仕入れ価格を押し上げ、十分に価格転嫁できないと利益を圧迫するようになります。

つまり、それだけマージンが縮小し、「採算」が悪化する形になります。

これを象徴するように、2つのデフレーターの乖離が見られます。

まず「国内需要デフレーター」が、輸入コスト高などによって着実に上昇しています。昨年7-9月から前年比上昇率を追ってみると、0.6%、1.2%、1.8%、2.6%、3.0%と上昇率が加速しています。それだけ輸入コスト高が広く波及するようになっています。

その一方で、もう1つのデフレーターが「GDPデフレーター」で、こちらはこの5四半期の間、すべて前年比はマイナスとなっています。この7-9月はマイナス0.5%です。GDPデフレーターは総生産額から仕入れ額を差し引いた付加価値部分の価格がどう変化したかを示すもので、ある意味では単位採算を表します。仕入れコストが上昇した分、売値に価格転嫁しきれないと、マージンが縮小します。これがGDPデフレーターのマイナスの意味です。

つまり、日本は輸入コストの上昇を輸出価格や国内販売価格に十分転嫁できていないために、採算が悪化し、生産した割に儲からない形になっています。

所得の減少をだれが負担するか

GDIという所得の合計が減少しているので、そのツケを誰かが払わなければなりません。

企業が利益を維持しようと思えば、労働者にしわ寄せが来ます。例えば、雇用者報酬は7-9月期に前期比0.8%減となり、3四半期連続で前期比減少となり、前年比では1.6%の減少となっています。

この間、実質GDIは前年比0.8%減です。全体としてのこの所得減のうち、企業は何とか利益を確保しようと、賃金など人件費を抑制した結果、しわ寄せが労働者に来た形です。

それが7-9月の個人消費の弱さに現れています。労働者全体の実質所得を示す実質雇用者報酬が前期比で3期連続の減少で、前年対比でも1.6%も減少すれば、いくらコロナ規制が緩和されても限度があります。

所得が減っている分、政府による旅行支援などを利用し、低コストで旅行したり外食した姿が見て取れますが、これまでの物価高でコロナ危機時に消費を抑制して貯めた「強制貯蓄」はすでに使い果たした形になっています。

ここからは所得の増加の裏付けがないと、消費の拡大は続きません。政府の観光支援も、コロナの第8波の兆しが関東以北でみられるだけに、支援の頓挫も懸念されます。

Next: 国内総所得減少の犯人「交易損失」をどう止める?対処法は2つ

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