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なぜGDP減少のしわ寄せを労働者ばかりが低賃金で背負うのか?政府ができるのにやらない2つの解決策=斎藤満

7-9月期のGDPは前期比0.3%(年率1.2%)の減少となりました。さらに問題とすべきは、昨年初から2年近く続いている海外への所得流出によって、日本の総所得はGDP以上に大きく、かつ継続的に縮小していることです。これが企業か個人の所得を減じる要因になり、GDPの低迷以上に日本経済の不況感を強めています。この所得流出を何とか軽減しないと、国民生活はさらに悪化します。(『 マンさんの経済あらかると マンさんの経済あらかると 』斎藤満)

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※有料メルマガ『マンさんの経済あらかると』2022年11月18日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:斎藤満(さいとうみつる)
1951年、東京生まれ。グローバル・エコノミスト。一橋大学卒業後、三和銀行に入行。資金為替部時代にニューヨークへ赴任、シニアエコノミストとしてワシントンの動き、とくにFRBの金融政策を探る。その後、三和銀行資金為替部チーフエコノミスト、三和証券調査部長、UFJつばさ証券投資調査部長・チーフエコノミスト、東海東京証券チーフエコノミストを経て2014年6月より独立して現職。為替や金利が動く裏で何が起こっているかを分析している。

日本人の総所得はどんどん減っている

内閣府が15日に公表した7-9月期のGDP(国内総生産)は前期比0.3%(年率1.2%)の減少となり、事前に期待していた「4四半期連続のプラス成長」は実現しませんでした。

それでも政府からは「サービス輸入がこの期に集中したために控除項目の輸入が大きく増加し、外需の成長寄与がマイナス0.7%となったのが主因で、内需は堅調に拡大している」と説明しています。

しかし、日本経済が抱えている問題はここにはなく、むしろ昨年初から2年近く続いている海外への所得流出によって、日本の総所得はGDP以上に大きく、かつ継続的に縮小していることです。

これが企業か個人の所得を減じる要因になり、GDPの低迷以上に日本経済の不況感を強めていることです。

この所得流出を何とか軽減しないと、国民生活はさらに悪化します。

大きく拡大したGDPとGDIの乖離

日本経済全体を包括的に示す指標としてGDP(国内総生産)が便利ですが、これは支出面から集計したGDEと同じもので、GDPも通常はGDEで表示されます。

これに交易利得を加味した所得の合計としてGDI(国内総所得)があり、所得面から見た成果の合計となります。交易利得とは、交易条件(一般に輸出価格/輸入価格)の変化により、海外から所得が流入するか流出するかを代弁するものです。

この交易条件が昨年初めから悪化傾向にあり、この7四半期、交易利得はGDIを押し下げる形になっています。

直近の7-9月期でみると、実質GDPが前期比0.3%減に対して、実質GDIは前期比1.0%減となり、GDP以上に大きく減少しています。この差が交易利得の悪化によるものです。

これはがんばって生産はしたものの、安売りで採算が悪化したために、所得は増えなかったことになり、「タダ働き」に近い形です。これが2年近く続いていることになります。

これが累積すると、この影響が無視できなくなります。例えば、7-9月の実質GDPは前年比では1.8%増ですが、実質GDIは前年比0.8%減となっています。その差は2.6%もあります。

1年間でこれだけ差が開いたのですが、実際には7四半期連続で交易損失が発生しているので、累計ではこれよりさらに大きな差となっています。

Next: 働いても働いても所得が増えない……なぜ「採算」が悪化している?

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