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2023年、ウクライナはもっと悲惨に。2月に迫るロシア全面攻勢で第3次世界大戦に突入か=高島康司

和平を模索する提案

このように見ると、さらなる高性能兵器の供与で2023年にはウクライナ戦争は一層激化する可能性がある。一方、そうした中、和平を模索する提案も行われている。

アメリカの外交政策にいまでも一定の影響力を持っている元国務長官のヘンリー・キッシンジャーが、ニュース雑誌、「スペクテイター」に「第二次世界大戦を回避する方法」という記事を掲載し、即刻和平を模索しないとウクライナ戦争は第三次世界大戦の引き金となると警告した。まずキッシンジャーは、この戦争が第一次世界大戦に似ているとして次のように言う。

「第一次世界大戦は、ヨーロッパの高みを破壊する一種の文化的自殺だった。ヨーロッパの指導者たちは、歴史家クリストファー・クラークの言葉を借りれば、夢遊病者のように、1918年の終戦時の世界を予見していれば、誰も参戦しなかったであろう戦争に突入したのだ。

それまでの数十年間、彼らは2つの同盟関係を構築することで対立を表し、その戦略はそれぞれの動員予定によって結びついていた。

その結果、1914年、ボスニアのサラエボで起きたセルビア人によるオーストリア皇太子殺害事件をきっかけに、ドイツがフランスを倒すために、ヨーロッパの端にある中立国ベルギーを攻撃するという万能計画を実行し、大戦争に発展することになったのである」

このような最悪の状況に陥るリスクを減らすため、ロシアとウクライナの交渉による和平を呼びかけた。戦争によって無力化されたロシアが望ましいという考えもあるようだが、キッシンジャーはそうは思わないという。ロシアはその暴力的な性質にもかかわらず、半世紀以上にわたって世界の均衡とパワーバランスに決定的な貢献をしてきたとして、ロシアの存在を評価している。そのようなロシアと和平協定を結ぶことこそ、世界が一層暴力的になることを回避する方法だとした。

だが、ウクライナ政府はこの提案を「侵略者への譲歩」にあたるとして退け、領土を譲り渡すことを含む取引はあり得ないと表明した。

キッシンジャーと類似した提案は、「ウォールストリート・ジャーナル」のコラムニスト、ウォルター・ラッセル・ミードも「ウクライナ和平に備える時、休戦以上に永続的であるべき」という記事で書いている。

全面攻勢後の危機、マクグレガー大佐の発言

さて、このように見てくると、やはり来年の1月から2月頃にかけてロシア軍の全面攻勢がある可能性は否定できないようだ。いま和平の提案も方々から出ているが、全面攻勢による戦争の激化には間に合わないだろう。しかし、全面攻勢の結果、ロシア軍が優勢になると、ウクライナ戦争の危機は一層深化する可能性の方が大きい。

第722回の記事で書いたが、ペトレイアス大将は、NATO軍ではなく、米軍、ポーランド軍、ルーマニア、イギリス軍の欧州有志連合軍がウクライナに介入する可能性があると言っていたが、全面攻勢の結果、ロシア軍が優勢になると、この可能性も否定できなくなるはずだ。

第722回の記事で紹介したトランプ政権の国防長官上級顧問のダグラス・マクレガー大佐は、最近のユーチューブのチャンネルでおおよそ次のように言っている。

バイデン大統領がウクライナの自由と民主主義を守るために米軍をウクライナに派遣することを決定したと発表するテレビ演説を近い将来見ることになるかもしれない。これは、ベトナム戦争にアメリカが介入したときと同じ説明だ。しかし、今度はベトナムではない。ロシアが相手なのだ。このような計画は、どうしようもないナンセンスとして退けなければならない。

このように言い、戦況を転換するために米軍が派遣される可能性について言及した。

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