これからウクライナ戦争は天王山を迎えそうな流れになっている。2023年には戦争はさらに激しくなり、下手をするとこれが第3次世界大戦の第一歩になるかもしれない。少なくともその可能性は否定できない状況だ。(『 未来を見る! 『ヤスの備忘録』連動メルマガ 未来を見る! 『ヤスの備忘録』連動メルマガ 』高島康司)
※本記事は有料メルマガ『未来を見る! 『ヤスの備忘録』連動メルマガ』2022年12月23日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。
これからウクライナ戦争は天王山になるのか?
これからウクライナ戦争は天王山を迎えそうな流れになっている。2023年には戦争はさらに激しくなり、下手をするとこれが第三次世界大戦の第一歩になるかもしれない。少なくともその可能性は否定できない状況だ。
ウクライナ戦争は膠着状態が続いている。東部と南部では激しい戦闘が続いているものの、戦況には決定的な進展がなく、ロシア軍もウクライナ軍も支配地域の拡大は見られない。双方とも決定的な勝利がない状態だ。
一方、ロシアによるウクライナの火力発電所などのエネルギー関連インフラを標的にしたミサイル攻撃は続いており、ウクライナの電力供給の55%程度が止まっている。
他方、ウクライナによるロシア国内への攻撃も続いている。ロシア東部のブリャンスク州のトルブチェフスクでは、変電所が自爆テロにあった。また、ベルゴロド州シェベキノにある別の変電所も攻撃されたと報じられている。ウクライナ政府筋は、クリミアとケルソンを結ぶ主要な物流ルートのひとつであるチャプリンカで、高機能ミサイル、「HIMARS」を使用してターゲットを攻撃したとも主張している。
そのような中、20日、プーチン大統領は、ロシアが併合したと主張する「ドネツク」「ルガンスク」「ヘルソン」「ザポリージャ」の4州は「極めて困難な状況にある」と初めて認めた。そして、情報活動に対抗する戦いにおいて「最大限の冷静さと戦力の集中」が必要だと訴えるとともに、「外国の情報機関の活動を完全に抑え込み、直ちに反逆者やスパイ、妨害工作員を特定することが重要だ」と強調した。
また、ウクライナのゼレンスキー大統領は今週、アメリカの首都ワシントンを訪問する見通しであることが分かった。ウクライナ政府関係者によると、ゼレンスキー大統領がアメリカを訪問すれば今年2月にロシアによる軍事侵攻が始まって以来、初めて国外に出ることになる。
※参考:ゼレンスキー氏、厳戒の陸路と空路で訪米-侵攻後初の外国訪問 – Bloomberg(2022年12月22日配信)
ロシア軍の全面攻勢の可能性
ウクライナ戦争のこうした膠着状態はここ数カ月ずっと続いている。
日本ではウクライナ軍が勝ち、ロシアが決定的に負けているかのような報道がなされているが、決してそうではない。ロシア軍の南部「ケルソン市」からの撤退以降、ロシア軍は支配地域を維持しており、ウクライナ軍はその奪還に成功しているわけではない。やはり膠着状態としか言えない状況だ。
そうした中で、ロシア軍の大規模な全面攻勢の可能性があることが、かねてから指摘されていた。このメルマガの第723回の記事では、この可能性をいち早く指摘したトランプ政権の国防長官上級顧問のダグラス・マクレガー大佐の分析を紹介した。一部を再掲載する。マクレガー大佐は次のように述べていた。
●これから始まるロシア軍の全面攻勢
発電所の破壊でウクライナが弱ったタイミングで、ロシア軍は全面攻勢をかける。ロシア軍は兵力不足と兵器不足に悩んでいると欧米では報道されているが、そのようなことはない。ロシア軍は次の全面攻勢を行うだけの十分な兵力がある。
1. 情報機関の衛星画像分析では、投入可能なロシア軍は54万人いることが分かっている。
2. さらに衛星画像解析から、5000両の軍用戦闘車両、そのうち1500両が戦車、1000両の自走砲、1000機のドローン、数百機のヘリコプターと航空機、そして爆撃機を配備している。
3. ウクライナの土壌は「チェルノーゼム」と呼ばれる肥沃な黒土である。泥の状態では軍用車両は沈み込み、動きが取れなくなる。黒土が凍結するまで作戦行動は難しい。凍結するまでには、氷点下の気温が2週間続くことが必要だ。12月10日から19日までにはこの条件は整う。
このように指摘し、12月10日から19日頃にロシア軍の大規模な攻勢があるとしている。
ウクライナのロシア軍最高司令官のスロビキン大将に与えられた任務は、ウクライナ戦争を終結させることである。そのためには、ウクライナ軍を徹底的に破壊するだろう。ロシアにはその能力がある。
もちろん、12月10日から19日頃にはマクレガー大佐が主張するちょうなロシア軍の全面攻勢は起こっていない。ロシア軍の兵力と兵器不足の状況から見て、規模の大きい攻勢が今後もないのではないかという見解もある。