問7. 「事が起こってからでは遅い」と言うが、優先順位は正しいですか?
安全保障に関しては、事が起こってからでは遅いので事前に準備しておかなければならないという意見は理解できます。
問題は、その金額と優先度にあると思います。一言で言えば「リスクの捉え方」です。
会社経営と国家運営を一緒に論じることはできないのでしょうが、ここまで考察してきた、日本が他国からの侵略危機に備える優先度は、日本が抱える社会的課題解決と比べて、優先度は高いのでしょうか。
会社経営と国家運営は違う……それはそのとおりですが、会社経営では、状況判断を冷静に行い、適切なリソース配分が、何より重要になってくるのです。
日本の未来への投資と安全保障のためのコスト負担、今はどちらを優先すべきなのでしょう。「ゼロサム」ではないので、予算のウエイトを見直すことも重要かと思います。
だとすると、最初から「GDP比2%」という予算設定ありきの対策というのは、いかがなものでしょうね。NATOが「2%」という数字を用いているから、先進国がどうとかというのは、説得力を持つのでしょうか。
ずっと放置されてきた「少子化対策」
日本の明日を支える世代を育てる「教育への投資」
世界の頭脳に追いつく「大学への投資」「研究開発への投資」
社会制度再構築に向けての社会保障制度や医療制度への資金投入…
コロナによる貧困対策も急務ですよね。
世界と比較してもそうですが、今の日本の世界での立ち位置を上げていくには、教育や研究開発に力を入れていくことに加えて、さらにはDX推進、テクノロジー分野へのさらなる投資が重要であるのは、誰の目にも明らかです。
これらの課題解決に向けてのリソース振り分けと、安全保障への配分とを考えた上で「防衛費をGDPの2%にまで増やす」という結論になったのなら、まだ理解はできます。
それでもその判断に至った経緯や、税金を使うことは、ちゃんと国民に説明し、国会で議論すべきことです。
軍事費がこうも簡単に数字が先行して決まっていくプロセスを見ていると、なんか日本が沈没する音が聞こえるような気がしてしまいますね…。
「防衛装備移転三原則」の運用指針の見直しを検討
ここまで「反撃能力(敵基地攻撃能力)」を中心とした「問い」を立ててきましたが、ここからは、その周辺の話になります。
安保関連3文書では、防衛装備品の移転を円滑に行うため、「防衛装備移転三原則」の運用指針の見直しを検討するほか、新たに、経済安全保障の考え方などを盛り込んでいます。
日本は長らく「武器輸出三原則」で武器輸出を原則禁じてきましたが、第2次安倍政権の2014年に「防衛装備移転三原則」を制定して、条件付きで輸出を認めるようになりました。
現行の運用指針では、外国との共同開発などを除くと、輸出できる装備品を「安全保障面での協力関係がある国」に対し、「救難、輸送、警戒、監視、掃海」の5つに限っています。
今年3月、ロシアの侵攻を受けたウクライナへ防弾チョッキを提供するのにあたって、その運用指針を改定しています。
輸出品目を拡大したい……「地雷除去」や「教育訓練」に関する装備品に拡大するだけでなく、護衛艦や戦闘機など殺傷能力のある装備品にも拡大したいようです。
政府が装備品を提供する相手として念頭にあるのは主に東南アジアのようですが、その背景には、日本の軍需産業を育てる狙いがあるような気がしますね。考えすぎですかね…。