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株価V字回復「ヤマトHD」は買い?復縁したAmazonは救世主か死神か、経営状況と将来性を分析=佐々木悠

値上げで対応できるのか?

EC対応のコスト増加による収益圧迫に対応する策を考えます。

それは配送料の値上げです。

実は2017年ヤマトはアマゾンの配送物に対して値上げを行ったことがあります。

当時はAmazonの物流網が確立しておらず、ヤマトの配送ネットワークを使用していました。その際ヤマトは値上げを行ったのです。

EC需要拡大に対応できない状況を打開するため値上げを行い、物流量をコントロールする狙いがありました。結果的に単価が上がり、取扱数量は激減。

一見狙い通りに見えますが、結果的に2年後に値下げを行っています。推察になりますが経営陣は拡大するEC需要に対し、自社の取扱数量が減っていることに恐怖したのだと思います。

つまり、過去の値上げは経営の失敗と言って良いでしょう。

このBtoC(EC)に注力するのか否かハッキリしない意思決定となってしまいました。

現在では外部ドライバーを契約するなど策を打っていますが、費用が嵩むなど問題があり成功しているとは言えません。ここで四苦八苦している間に、2023年現在ではAmazonは独自の販売網を確立し、もはやEC関連の売上増加率鈍化がリスクとして考えられます。

このような経営環境の中でECと既存の物流ネットワークのオペレーション最適化を図るというのはやや後手と感じざるをえません。

ヤマトの対応策を考える

オペレーションの最適化の内容を見てみましょう。経営計画ではEC需要にはデジタル技術を駆使して対応することが表明されています。

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出典:ヤマトホールディングス 経営計画

会社の方針はECへの需要増加へ対応するための努力は続ける、というものです。

各種IR資料では「データ・ドリブン経営への転換」という単語を度々目にします。

データドリブン経営とは

「データ基盤整備とアルゴリズム開発の高度化で、各地域の需要と業務量予測の精度を向上し、個人、法人ともに変化、多様化するお客様のニーズに応えるグループ経営資源の最適配置を進めること」です。

私はデータの力を使ってEC需要に最適な経営資源を投入する、と理解しています。

そして次に注目すべきは経営陣の配置です。

2022年5月、元Amazonジャパン副社長の鹿島明弘氏がヤマト運輸の執行役員となりました。鹿島氏は輸配送オペレーション統括、という役割ですからEC関連のオペレーション改善にも関与しています。

インタビューの中で「CtoCが中心だった時代の集荷ネットワークをベースにした宅急便センターの在り方を変え、大型化・集約化する必要がある」と述べています。伝統的な強みからの脱却、改革を連想させるような言葉だと思います。

ヤマトとAmazonは切ってもきれない関係ですから、鹿島氏がヤマトへ入社したことで値上げを含めた交渉やネットワークの整理などのECにまつわる課題が少しずつ解決されていくのではないか?という期待も高まります。

Next: ヤマトは投資対象になり得るのか?長期投資家の分析は

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