fbpx

本当はこわい少子高齢化、あと数年で日本はゴーストタウンだらけに。「異次元」の解決策はあるか?=午堂登紀雄

技術の伝承が損なわれる

たとえば石油精製プラントや発電所建設、製造装置や制御・検査装置などといったいわゆる重電分野の技術力の高さは日本は世界でもトップクラスですが、技術の伝承にもそれなりに手間暇がかかるわけで、若手が少なければ失われていきます。

すると日本のお家芸であった基礎技術、インフラ技術が他国に負けていく。重電だけでなく、伝統工芸分野などもそうですよね。

身近なところでは鉄道作業員、電線や鉄塔の作業員、携帯基地局の作業員などなど、保守管理が重要だけれど体力的にキツい仕事で人手不足が起こります。

電気設備の保守管理要員が不足すれば、停電など災害・障害時の復旧の遅れなどが常態化する可能性がある。道路や橋といったインフラの維持管理も、十分にできなくなるかもしれない。

第一次産業が衰退し食糧不足問題に?

これらに限らず、あらゆる場面で人手不足が起こるわけです。

特に農業・漁業・畜産業・林業といった第一産業では高齢化が進んでいて、農業はスマート革命が起きつつありますが、その他は世代交代が遅れている。

たとえば漁業人材が不足すれば漁獲量が減り、それを補おうとしても日本は海外から買い負けてしまい、海産物の値段が上がるということが起きるかもしれない。

個人的な危機感としては介護人材の不足で、もし将来自分が要介護になったとき、べらぼうな金額を払わないと介護してもらえないかもしれないという点です。

いまですら介護要員が足りないそうで、将来要介護者が増えても少子化が改善されなければ介護職を選ぶ人も少なくなり、介護は極めて贅沢な富裕層だけのサービスになりかねません。

社会保障体制の崩壊

介護に限らず社会保障費やその体制維持に対しては、少子高齢化はモロに効いてきます。

私が所属するいわゆる団塊ジュニア世代は毎年200万人前後も出生し、それが4年くらい続きました。そこから150万人を切り、100万人を切っていき、今年は年間80万人割れと当時の半分以下。一方、その団塊ジュニアは現在48歳~51歳ですから、いまから20年後にはほぼリタイアして年金生活に入ります。同時に、80万人世代が成人して社会保険料を払うようになる。

この膨大な人口構成比の差を考えれば、極端な話、将来は現役世代1人で高齢者1人を支えないといけなくなりそうで、それでは現役も高齢者も共倒れでしょう。

しかも要介護人口も増えて介護保険料も増額されるし自己負担も増え、要介護認定も厳しくなる。
生涯医療費の半分は75歳以降にかかってくると言われていますから、医療財政はますますひっ迫し、後期高齢者の自己負担額も1割では済まなくなるかもしれない。

年金受給年齢は遅くなり、支給額は減り、医療費負担も介護費用も増え、現役世代の社会保険料負担額は増える。

子どもが毎年150万人200万人と生まれれば、その原資も捻出できるはずですが、そうならないから国民も政府も負担は増す一方です。

かように少子化は国家体制存続における全方位で悪い方に効いてくるわけですが、前述した通り次の世代の育成と戦力化には少なくとも20年はかかるわけで、付け焼刃でどうにかなるものでもない。

こういう少子化の恐怖を、政治家はこれまでずっと現実から目を背け放置してきたわけですが、もはやこのあたりがラストチャンスのような気がします。

戦術の間違いは戦略でカバーできますが、戦略の間違いは戦術ではどうにもならないのですから。

Next: どうすれば少子化が止められるのか?国が「異次元」にやるべきこと

1 2 3 4 5
いま読まれてます

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

MONEY VOICEの最新情報をお届けします。

この記事が気に入ったらXでMONEY VOICEをフォロー