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遠のく同性婚・LGBT差別禁止の法制化…岸田首相「社会が変わってしまう」発言の罪深さ。G7で唯一の多様性不寛容の国ニッポン=原彰宏

なぜ自民党は同性婚や夫婦別姓を認めたくないのか?

2月11日〜13日に実施された共同通信社による全国緊急電話世論調査では、同性婚を“認める方がよい”との回答は64.0%で、“認めない方がよい”の24.9%を大きく上回りました。

岸田文雄首相の同性婚導入に関する「家族観や価値観、社会が変わってしまう課題だ」との国会答弁について「適切でない」との答えが57.7%でした。

この結果に、60%にも達していないのか…と感じました。もっと「適切でない」と思う人は多いと思っていました。この国の性的マイノリティーの方々への理解度はこんなものかという感想です。

LGBTなど性的少数者への理解増進法が必要だとの答えは64.3%でした。同性婚に関して、年代別では若年層(30代以下)で81.3%が賛成したのに対し、高年層(60代以上)の賛成は51.4%にとどまったとの結果です。

同日にNHKが公表した世論調査でも、同性婚を法律で認めることに「賛成」が54%、「反対」が29%となった。18〜39歳では72%が賛成と答えているそうです。

このような世論の中での岸田首相のあの発言を受けても、岸田内閣支持率は33.6%と、1月下旬の前回調査から0.2ポイント増と横ばい、不支持率は2.2ポイント減の47.7%でした。

この国の国民感覚って、どう理解すればよいのでしょうか。

なぜ自民党は、同性婚賛成の意見が多いにも関わらず、同性婚や夫婦別姓を認めることに消極的なのでしょうか。

1つは、自民党が見ている「世論」というのは、私たちが通常考える「世論」とは違うものだということです。

自民党議員にとって大事にしている「世論」とは、「“選挙に行く人”たちの思い」なのです。“選挙に行く人たち”の意見が“絶対正義”なのですね。

いくら若者が同性婚に賛成の意見を述べていても、選挙に行く人たちが同性婚を認めて欲しくないと言えば、その思いに従うのですね。

それが、自民党の選挙を前提とした「マーケティング」結果なのだとすれば、同性婚や夫婦別姓に消極的な姿勢を取るのも、なんとなくですが理解できますね。

もう1つは、よく言われていることですが、コアな自民党支持層の意向があるということですね。

自民党の選挙対策は、お店でたとえば「常連客」を大事にして、それから一見客を狙うというものです。「常連客」は固定層、「一見客」が無党派層になります。

野党はどちらかといえば、一見客対策、無党派層への訴えが多いように思えます。

無党派層は風のようなもので、常にふわふわとしていて掴みどころがなく、それこそ、その時の空気感に流されやすいものです。

その点、固定層を、特に岩盤支持者層を固めることは、選挙で勝つためには最も重要で効率的な戦略だと思いますね。

その自民党というお店の「常連客」の代表が、経済団体であり、医師会などの業界団体であり、宗教団体なのです。

特に「宗教右派」と呼ばれる、積極的に政治に関与する団体の影響力は大きいようです。なぜなら、彼らが選挙でもっとも重要な基礎票となる「岩盤支持者層」だからですね。

具体的には、日本会議や神道政治連盟(神社本庁)というものが頭に浮かびます。

いま世間を賑わせている旧統一教会(世界平和統一家庭連合)は、もともとの主義主張が同性婚や夫婦別姓に反対するものではなく、時の権力者にすり寄るために、その権力者が喜びそうなものに合わせているだけだと、長年旧統一協会を研究してこられた鈴木エイト氏や日本会議を研究されている菅野完氏は語っています。

政策立案のうえで自民党にとって大事なのは日本会議の方で、旧統一教会が自民党を動かしてるわけではないということだそうです。

いずれにしても選挙において候補者は、1票でも多く票が欲しいわけです。

それがどんな票であれ、僅差の局面では合否を左右することも考えられますので、「くれるものは何でももらう」という思いになるのでしょう。

“もらえる”票を手にしたら、それを手放すことを恐怖に感じるもので、それで自分の主義主張を宗教右派の側に寄せていくのではないでしょうか。

国会議員という立場を死守したい“政治屋”にとっては、一度握った権力を手放せない人たちにとっては、必ず決まって投票してくれる固定支持層に頼ってしまう気持ちは強くなるのでしょう。

固定層がないと不安でしょうがないのでしょうね。

なぜ支持率が下がらない?

なぜ日本会議などの宗教右派と呼ばれる人たちが、頑なに同性婚違反対し、選択的であれ夫婦別姓を認めたくないのかは、長年研究されている専門家の方々にご教授いただくとして、岸田首相発言を受けても自民党支持率が下がらなかった、微妙に増えたというところが非常に気になります。

自民党支持者が、全員このような差別的思考を持っているというわけではないでしょうが、同性婚等に反対する人たちは、岸田発言を歓迎するだろうし、そうでない人は否定的な立場を取るはずなのにもかかわらず、そのどちらの立場の人も微妙な動きになっているのが支持率から見て取れます。

宗教右派の人たちは、伝統的家族制度の崩壊を嫌っているとよく言われます。これを別の角度から見れば、「女性の権利」が求められるのを嫌がっているのではないでしょうかね。

社会の“戦前回帰”を望んでいるとも言われます。

外国人参政権、女性共同参画、子どもの権利……同じ差別でも、その対象者によって、宗教右派の人たちの反応は異なっているような気がしますね。

Next: 自民党「理解増進」vs. 野党「差別解消」という構図に

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