気になるのはシリコンバレー銀行経営陣の事前の持ち株大量売却
すでに米国内のメディアではかなり詳細が報道されていますが、気になるのはシリコンバレー銀行の経営陣がとった行動です。
シリコンバレー銀行のCEOであるグレゴリー・ベッカーは、360万ドル相当(11%)の株式を2週間ほど前の2月27日に売却し、CFOのダニエル・ベックも保有する株式の32%(約60万ドル)の売り抜けに成功しています。
さらにCMOだったミシェル・ドレイパーも28%の売却を果たしていますから、この3名のCクラスの人物たちは完全にインサイダーでシリコンバレー銀行が破綻するであろうことを事前に知っていた可能性が高まります。
今回シリコンバレー銀行の預金者は財務省が異例の対応をして米連邦預金保険公社(FDIC)の預金保護上限25万ドルを超えて全額アクセス可能としていますから、預金者は胸を撫でおろす結果になっていますが、経営者が一部とはいえ持ち株をさっさと売り抜けたという事実は今後、相当大きな問題となりそうな状況です。
とにかく日米国債購入で大きな含み損の本邦銀行勢は似たようなもの
さすがに本邦の金融機関は「顧客の預金をすべて国債購入で運用しました」などという間抜けなことはしていませんから、元金の支払いさえ困るといった話は示現しないでしょう。
それでもこの10年、日本国債を買って日銀の当座預金に預けておけば豚積みの債券から付利が得られてきたのは事実。ポスト黒田で緩和終了・利上げ再開などとなれば国債価格は下落、保有金融期間はすべからく含み損を抱えることになるのは必至の状況です。
ここだけ切り出してみますと、本邦の金融機関もシリコンバレー銀行などとたいして変わらない運用をしてきたことがわかります。
また昨年金融庁にそそのかされて為替のヘッジ付きの米債を購入した金融機関はメガバンクから地銀に至るまで相当な含み損を出しており、この3月までに泣きながら売却減損処理を行ったところも相当多くなっていることが窺われるところです。
投資運用責任者にまったく知見がなく稚拙な運用をしてしまうのは、実はまさにそっくりの状況であることが見え始めています。
本邦の銀行の場合、そこまで追い込まれることはないと思われますが、失われた30年でそれまでは相当な運用経験のあった人間が銀行からいなくなったのは、日米ともに同じ状況のように見えてくる次第です。