先週金曜日、全米16位のシリコンバレー銀行があっけなく破綻することとなりました。また同日、FTXの不正取引絡みで当局からの厳しく捜査されていたシルバーゲート銀行も親会社が「清算」を決めています。この2つの銀行には、意外な相似性があります。そして日本の金融機関も似たようなもので、ここからの影響を注視する必要がありそうです。(『 今市的視点 IMAICHI POV 今市的視点 IMAICHI POV 』今市太郎)
シリコンバレー銀行破綻……負の連鎖は続く?
先週金曜日、総資産は全米で16位のカリフォルニアを拠点をするシリコンバレー銀行があっけなく破綻することとなりました。
前日にCEOが登場して「大丈夫だからあまり神経質になるな」と言った翌日の破綻ですから、リーマン・ショック前からトレードをしていた投資家はなんとなくその頃の嫌な記憶がかなり蘇ったものと思われる状況で、当然、市場では連鎖的な動きを心配する声が高まっています。
実は昨年からFTXの不正取引絡みで当局からの厳しい捜査があり預金者離れが加速していたシルバーゲート銀行も、この日に親会社が「清算」を決めています。
その背景はまったく異なるものの、金融機関破たんの連鎖イメージはかなり拡散することとなってしまったのは言うまでもありません。
2つの銀行の意外な相似性
ウォールストリートジャーナルがすでに先週指摘していますが、コロナ禍での業績拡大から一転、FRBの金利上昇で事業が上手くいかず、ここへ来て低金利資金の借り換えもうまく行かずに四苦八苦している取引先が多いのが1つ目の共通点となっているようです。
シリコンバレー銀行の場合、同エリアのスタートアップ企業の7割近くがお世話になっているとも言われていますから、取引先には相当なバイアスがかかっており、FRBの壮絶な利上げに実はほとんど儲かっていないユニコーンのスタートアップなども金利負担から相当厳しい業績となることを余儀なくされており、これが同行からの資金の引き揚げにつながっているといいます。
一方、シルバーゲート銀行のほうは仮想通貨決済送金等に特化していたことから、FTX以降次々様子がおかしくなった取引所の悪材料をそのまま食らう形になっており、シリコンバレー銀行同様、銀行からの資金流出に歯止めをかけられないままとうとう清算・自主廃業に追い込まれています。
さらにこの2行が酷似しているのは、バイデン政権がこの3年間100年に1度のパンデミックと称して国民に世帯あたり600万円以上の給付金を配布してしまったことで、国内でもひょっとこ爺のようなどこかの政党の副総裁が指摘していましたが、大量の給付を国民に行うとすぐには使わずにまずは預金に回す…という状況がはっきり現れてしまったようです。
この預金額は日本円にして一時的に300兆円とされていましたから、シリコンバレー銀行やシルバーゲート銀行など中堅金融機関にもなんの努力もないままに預金が集まったようで、投資能力皆無の運用者はほとんど米長期債や住宅ローン担保証券などの有価証券に投資してしまったのも大きな間違いの始まりだったようです。
ご案内のとおりFRBは昨年から急ピッチで利上げを行っていますから、米債の価格は下落一辺倒で住宅ローン担保証券も同様の状況に陥ったことから、預金者への支払い元金すら確保できないところにまで追い込まれてしまったといいます。
そんなに米債を買ってしまったのかと呆れること至極ですが、この話、本邦の金融機関にも一脈通じる部分があることがわかります。
全米の銀行の資金運用の平均は42%が債券運用なのに対し、シリコンバレー銀行は57%もの資金を長期債に投資してしまったというのですから、運用者の無能ぶりも顕著なものあがあります。