花王の対策
業績悪化の要因としては、外部要因が大きいのですが、経営陣は相当な危機感を持って対策に動いているようです。
<戦略的値上げ>
現状では値上げ対象品目のカバー率は18%にとどまっていて、売上高としても30%分しか値上げできていませんでした。
それを、対象品目の100%、売上高として170%の値上げを目標にすると言っています。
値上げによる客離れが怖いので、企業としては値上げしづらいところなのですが、背に腹は代えられないということで値上げを断行するようです。
<収益性改善>
コスト削減や、収益性の高い商品に絞った経営を行いつつ、リストラ等も含む構造改革を行っていくとしています。
化粧品やスキンケア、ケミカルといった、収益性の高い海外を含む事業にシフトしていきたいというのが花王の意図ではあります。
花王 vs. ユニ・チャーム
しかし、現状として花王は海外にうまく進出できているとは言い難い状況です。
海外の売上高比率ですが、ユニ・チャームが62%に対し、花王は42%にとどまっていて、現地の生活に根付いているとは言えない状況です。
国内では値上げに対してシビアなのでなかなか値上げしづらいのですが、海外だと割とスムーズに原価上昇分を価格に転嫁できています。
つまり、海外に展開できていれば、原材料費高騰の影響が少なくて済むということになります。

花王<4452> 業績(SBI証券提供)

ユニ・チャーム<8113> 業績(SBI証券提供)
その結果がこの業績に出ています。(売上高と経常利益のグラフ)
海外比率の高いユニ・チャームはコロナ禍以降業績を伸ばしています。

SBI証券提供
株価を見ても、ユニ・チャームは伸ばしてきていて、花王との明暗がくっきりと分かれている状況です。
まとめ
- 外部環境は今が最悪。原材料価格高騰の収束待ち
- 経営陣は危機感を持ち、業績改善に取り組んでいる
- ただし、国内が主力である限り成長性に疑義
- 現状から判断すると、長期投資対象とは言い難い(私見含む)
- 妥当株価:EPS250円×PER25~30倍、7,000円程度
連続増配については、外部環境の改善次第というところはありますが、まだ利益に対して配当の余力は多少あるので意地で増配を続けるとは思いますが、このインフレがこの先何年も続くようであれば厳しくなってくるかもしれません。
しかしながら、外部環境はいつかは改善するものなので、株価が示すほどは悲観する必要はないと考えます。
長期投資の観点からすると、節約志向の強い国内が主力で、海外展開が上手くいっているわけではないので、ずっと持ち続けられるような銘柄ではないとは思います。
ただ、今が最悪の状況と言えるので、妥当な株価水準が7,000円くらいとすると、5,000円まで下がっていて、”平時に戻るまで”という逆張り的な考え方ができなくもないというところです。
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『
バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問
バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問
』(2023年3月23日号)より
※記事タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による
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【毎日少し賢くなる投資情報】長期投資の王道であるバリュー株投資家の視点から、ニュースの解説や銘柄分析、投資情報を発信します。<筆者紹介>栫井駿介(かこいしゅんすけ)。東京大学経済学部卒業、海外MBA修了。大手証券会社に勤務した後、つばめ投資顧問を設立。