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またも選挙意識の「なんでも補助金」傾斜。物価高も少子化対策も根本原因を無視した“痛み軽減”に終始=斎藤満

本質とは異なる一時的な物価高支援

物価高支援策も相変わらず物価抑制ではなく、物価高の痛み軽減策にとどまっています。

経済産業省が今回提示した電気代引き下げ案は、本来再生エネルギー推進のため、再生エネルギーを利用した発電分を電力会社が買い取る際の資金負担を国民に賦課金として課しているもので、いずれはこれを軽減するとしても、今この時期に提示するのは、いかにも選挙狙いの印象を与えます。

低所得世帯への3万円支援は、物価高支援としては良いとしても、物価高を早く収める努力をせずに、対症療法として支給するのでは物価高が続く間、これを続けなければならなくなります。

1回限りのものであれば、年間消費額の1%強の支援に過ぎず、年間4%も上がる物価には太刀打ちできません。日銀と協力して物価高を抑えるのが先決です。

米国型の収支提示を

こうした安易なバラマキを行いやすくしている原因の1つに、日本の予算制度が「単年度主義」を取っていることにあります。1年の予算については歳出と歳入を別々に考え、歳出が110兆円となれば、それに見合うよう、歳入は税収・税外収で賄えない分を国債発行で賄う形になります。

年度途中の追加策についても、今回のような物価高支援策を歳出面でまず決め、最後に補正予算で財源を決める形になっています。この方式は、予算を決めるのに時間がかからず、しかも歳出優先で行われるので、バラマキ志向の強い政権には便利な制度です。

その点、対極にあるのが米国の個別プロジェクト完結型予算です。米国の方式では、歳出の内容のみならず、その歳出を行うのに必要な財源、資金調達も同時に提示する必要があります。このため、ホワイトハウスが大規模な生活支援、インフラ整備案を出しても、その財源が増税や他の歳出カットによるとなると、与野党から反発が出る余地があり、財源の制約から支出規模が縮小させられたり、法案が通らないケースも出てきます。

日本も単年度予算制度をやめ、米国型のこの制度を取り入れることで、財政本来の「所得の再配分」が意識され、無駄な歳出にブレーキをかけることができます。

例えば、今回の児童手当の対象年齢引き上げ、所得制限撤廃案につては、支給対象が増える分財源手当てが必要になります。これまでのやり方では、歳出が膨らむ分、のちに補正予算で別途財源手当てし、大方国債の増発で賄われることになります。

しかし、米国型ではこの対策によって必要な資金がいくらで、その財源をどう調達するか、同時に議論することになります。財源として国民に広く増税で負担してもらえば、児童手当を受ける人も税負担をする分ありがたみが減り、逆に子どものいない世帯は子どもを持つ人々のために税負担が増えることに反発が予想されます。さらに安易に国債で調達となれば、最終的な資金負担は現在の児童や孫世代に課せられます。

児童手当の拡大が児童や孫世代の負担でなされるというのはブラック・ジョークと言わざるを得ません。

歳出と歳入をセットで議論すれば、安易なバラマキをしにくくする制度的ブレーキの役割を果たします。単年度主義予算を突然米国型個別案件処理に変えるのは抵抗があるなら、追加策、補正予算の分をこの個別案件完結型に変える手があります。その方が財政本来の所得再配分機能が意識されやすくなります。

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