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中国経済に「バンクデミック」直撃、途上国への“ばら撒き”インフラ融資が不良債権化=勝又壽良

「バンクデミック」の餌食になるのは、中国から支援を受けた途上国…

世界経済で最も底辺に位置するのは、中国が「一帯一路」事業で接近した国々である。この構図から言えることは、「バンクデミック」が否応なく襲うであろうという点だ。

前述のように、中国は発展途上国22カ国に総額2,400億ドルの救済資金支援を行った。救済支援の約80%が、2016~21年に集中している。対象国の多くをアルゼンチン、モンゴル、パキスタンなど中所得国が占めている。これは、「一帯一路」のインフラ建設に充てた融資の返済に苦しむ国が増えたので、やむなく救済支援を行った結果である。

『ロイター』(3月28日付)によれば、支援額が最も多かったのはアルゼンチンの1,118億ドルである。以下、パキスタン(485億ドル)、エジプト(156億ドル)となっている。9カ国は支援額が10億ドルより少なかった。リポート執筆陣は、中国の救済支援は「不透明でまとまりがない」と指摘した。

これは、中国のずさんな融資の一端を示している。経済合理性に基づく融資でなく、政治的思惑が先行しているだけに、不良債権化するのはごく自然の流れとなろう。

止まらぬ中国の海外拡大志向

中国は3月26日、中米ホンジュラスと国交を樹立した。これに先立ちホンジュラスは、台湾と断交した。ホンジュラスが、台湾と断交して中国と国交を樹立した理由は、GDPの55%を占める債務の返済で中国に緊急融資を仰ぐ目的だ。ホンジュラスは、親中の左派政権に交代したばかりである。

ホンジュラスは2020年、新型コロナウイルスの感染拡大に加えて、2度の大型ハリケーンの被害に遭い、GDPは9%も減少した。ホンジュラスのレイナ外相は、ホンジュラスは台湾に対し、年間5,000万ドル(約67億円)の援助の倍増と、6億ドル(約800億円)の債務の「再調整」を求めたが、前向きな回答を得られなかったという。以上、AFPが伝えた。台湾側は、この報道を否定しており「交渉中であった」としている。

レイナ氏は、エネルギー、社会政策、債務返済のための資金を必要としており、「国が破綻しかけている」と述べた。対外・対内債務は200億ドル(2兆6,700億円)に上り、返済額は昨年の22億ドル(2,940億円)に続き、今年は23億ドル(3,080億円)となる見込みだという。

中国は、政治的目的でホンジュラスに「甘い期待」を持たせたが、ホンジュラスは中南米の最貧困国の1つ。人口約1,000万人の74%近くが貧困状態だ。対外・対内債務で200億ドルも抱えている国である。中国は、財政的にもホンジュラスを抱え込む余裕がなくなっているはずだ。それにも関わらず、「甘言」を弄したのであろう。

騙された国が中国へ反旗を翻している

こういう甘言に騙された国が、中国へ反旗を翻している。南太平洋に浮かぶミクロネシアが、中国へ「三下り半」をつきつけたのだ。中国が、約束した財政支援を実行しないので、代わりに台湾から5,000万ドルの支援を受けるというものである。

ミクロネシア大統領は書簡で、「われわれの主権を損ない、価値観を否定し、わが国の選挙で選ばれた高官を自らの目的に利用する中国から距離を置くことで、安全保障が大幅に強化される」と付け加えた。台湾からは暫定的に年間1,500万ドルの支援策が提示されたという。『ロイター』が報じた。

ミクロネシアの離反は、中国が「弱小国」に対してどのように振る舞っているかを垣間見せており興味深い。「大国」として振る舞うが、肝心の資金は出さないという暴君ぶりを演じているからだ。これでは、離反して当然であろう。

中国は、「一帯一路事業」で世界中に援助の看板を立ててきた。「空手形」に終わっているものが多い。東欧諸国で、「反中国」の動きが強まり、台湾を外交相手に選ぶという事態を招いている。中国の財政事情悪化が、こうした約束不履行に陥っている背景である。

Next: いまや最大の所得収支赤字国に。中国は自ら世界金融不安の渦中へ

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