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中国経済に「バンクデミック」直撃、途上国への“ばら撒き”インフラ融資が不良債権化=勝又壽良

自ら世界金融不安の渦中

世界銀行によると、世界の低・中所得国が抱える2国間の債務のうち、中国が占める割合は2010年の18%から21年には49%にも拡大して世界一である。

先に指摘した米国の金融混乱が今後、世界的なリセッション・リスクを高めれば、中国がその巻き添えを食うリスクを高めるであろう。

中国は22年、海外借款の60%が財政危機状況の国に貸し付けたことが判明した。2010年には5%にすぎなかったのだ。中国が、一帯一路拡張を第一目的にして、事業の経済的合理性を考慮せずに起きた結果である。

中国には経済的合理性という融資基準がなく、政治的思惑が先行している。万一、債務の返済ができなければ、担保を取り上げるという「国際高利貸し」の本領発揮で穴埋めできると見ているのかもしれない。

このことは、今後の世界経済の変調リスクのなかで、中国の受ける傷跡が最も大きくなるであろうことを予測させる。世界銀行のデータによれば、リーマン・ショックの起こった2008年の世界経済の成長率はわずか2.1%で、2009年には世界経済が縮小に転じ、1.3%のマイナス成長となった。

こういう過去に比べて、今回の「バンクデミック」によって、世界経済の成長率はどうなるのか。

エコノミストらの中心的な予想では、2023年は約2.2%、24年は2.5%にとどまり、経済協力開発機構(OECD)が示した2022年の成長率見通し(3.2%)を下回るとみられる。『ウォール・ストリート・ジャーナル』が伝えた。

世界経経済成長率は、3%が好不況ラインである。3%以下は不況局面だ。この線引きによれば、23~24年も不況局面である。世界的な貿易停滞は、発展途上国にとって輸出減少を意味する。貿易赤字が膨らみ、貴重な外貨は減る。債務返済はストップする事態になろう。その余波を最も強く受けるのが、外ならない中国となるのだ。

今や、「一帯一路」関係国と運命共同体へ陥ったと言えるだろう。

最大の所得収支赤字国へ

中国の国際収支統計の「所得収支」に、中国の置かれている苦境がはっきりと現れている。

所得収支は、外国との間に行われる投資の配当・利息や労働報酬などの収支尻である。中国は、自国内で外資系企業を多数受け入れているので、恒常的な赤字状態にある。だが、2020年から赤字幅が急拡大している。世界最大規模だ。IMF調べである。

2019年:391億8,400万ドルの赤字
2020年:1,181億9,200万ドルの赤字
2021年:1,620億3,100万ドルの赤字

このような急激な所得収支の赤字は異常そのものだ。一帯一路事業で融資した資金の金利支払いが滞っていることを伺わせている。中国は、既述の通り2013年から22年までに、一帯一路事業に総額9,620億ドルを融資している。9,620億ドルの金利を商業銀行並みの5%とすれば、年間48億ドルになる。だが、中国は借入金を「又貸し」していると指摘されている。その借入金利息も加わる。このほか、外貨準備高にも借入金が入っているという指摘もある。その意味では、中国の外貨準備は、「伏魔殿」とも言えるのだ。

中身は不明であるが、1,600億ドルを上回る所得収支赤字を抱えることは、中国の国際収支にとってとうてい看過できない重大事態である。これは、中国経済にとって大きな負担になるのだ。

ここで、1つの仮説を立てることにしたい。中国が最近、「戦狼外交」をやめて「仲裁外交」に転換した背景は、経済危機を強く認識した結果であるという見立てだ。

Next: なぜ「仲裁外交」に転換?中国当局も経済危機を恐れている

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