fbpx

もはや長生きは地獄。生活保護の半数が高齢者世帯、“最低限度”以下の年金生活者も少なくない厳しい現実=神樹兵輔

「最低生活費」に届かない年金額でも生活保護を受給していない高齢者が少なくない

前述の通り、生活保護受給世帯は増え続けています。

当然ですが、生活保護支給総額も右肩上がりです。20年近く前の2003年度に2兆3,800億円だった生活保護の支給総額は、2021年度には3兆8,404億円と当然のごとく上昇し続けているのです(国が75%、自治体が25%負担)。

ほぼ20年で1.6倍になっています。そして、この先もこの金額は増え続けます。

なぜ、生活保護受給世帯数と支給総額が増え続けているかといえば、一番の理由が高齢化だからです。2021年度の生活保護受給世帯の164万世帯のうち、65歳以上高齢者世帯が90万8,960世帯(55%)を占めているからです。

現役時代にフリーターや自営業だった人は、老後に無収入となっても国民年金の受給だけが頼りです。国民年金の平均受給額は5.6万円(1人当たり)ですから、夫婦2人合わせても、11.2万円の年金収入なので、生活はかなり厳しいものとなるでしょう。

ただし、この夫婦の場合、11.2万円の年金収入は、「最低生活費(後述)」を下回っていますから、不足分の4~6万円の生活保護費が受給できます(地域によって最低生活費は異なる)。

夫が会社員で、妻が専業主婦だった場合の夫の厚生年金の平均受給額は14.5万円です(国民年金含む)。妻の国民年金5.6万円と合わせると夫婦で20.1万円になるので、なんとかカツカツで生活できるかどうかです。

ただし、この場合の高齢者夫婦は「最低生活費」を上回っていますから、生活保護費は受けられません。

いずれにしろ、このように年金受給者といっても、平均値を見ると、けっして豊かな生活は望めないのです。

今後、問題となってくるのは、高齢者世帯の中に、生活保護を受給できないと暮らしが成り立たない世帯が増えていく――ということでしょう。

前述の通り、生活保護受給世帯の約半分(55%)は65歳以上の高齢者世帯が占めているのが現状です。

生活保護は、8つの扶助から成り立ちますが、支給総額の内訳では、約半分(約50%)が医療扶助で、生活扶助が約30%、住宅扶助が15~16%、残りの5つの扶助が約5%といったところです。

厚労省の2021年度の「医療費の動向」によれば、1人当たり医療費は、75歳未満で23.5万円が、75歳以上だと93.9万円とおよそ4倍になります。

生活保護に占める65歳以上の高齢者の受給が増えるほど、医療費も増大する形になるのです。

いうまでもなく、生活保護制度は、憲法25条に定められた「健康で文化的な最低限度の生活」を保障し、その自立を促すものです。

働くことが可能な人は、働くことを求められます。

病気で働けない人は別ですが、役所のケースワーカーからは頻繁に訪問チェックされ、「○月までで打ち切るよ」などと不当に脅されることも少なくないようです。

しかし、この生活保護制度を受けることなく、「最低生活費」以下の生活を強いられている高齢者も多数存在します。

なぜでしょうか。

それは生活保護制度が、預貯金や生命保険、車や住宅などの資産が基本的にないことが、受給条件だからです。

したがって資産のある人は、それを売却して生活費に充ててからでないと支給条件に該当しません。

また、借金のある人も自己破産してからでないと受給できません。

ゆえに、現在すでに受給したくても受給できない高齢者が数多く存在するわけです(高齢者の約6割は自宅保有)。

また、生活保護の受給を申請すると、資産調査や三親等内の親族に援助ができないかどうかの「扶養照会」がいくのを嫌がる人も多くいます。

ゆえに生活保護申請を躊躇して、申請しない人も多くいるのが現状です。

貧困老後になる人は増える一方なのです。

Next: 年金減額は必至?生活保護費の圧縮、年金受給年齢アップで暗黒の未来へ

1 2 3
いま読まれてます

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

MONEY VOICEの最新情報をお届けします。

この記事が気に入ったらXでMONEY VOICEをフォロー