他社に真似されそうでも、儲かる仕組み
しかし、現状はゴーゴーカレーや日乃屋カレーでもカツカレーなどのトッピングカレーを出しています。つまりココイチの魅力であるトッピングは簡単に真似できるのです。
それでもココイチを運営する壱番屋の業績は、コロナ前までは右肩上がりでした。
出典:各年度有価証券報告書より作成
なぜトッピングを競合他社に真似されながらも売上を伸ばしているのでしょうか?
その鍵はフランチャイズ(以下FC)にあります。
創業者の宗次德二氏には、もう1つ大事なモットーがあります。それは「超顧客主義」です。この考えを実践するために、創業当初は各店舗に足を運んでカレーを食べている人の様子を観察したり、3時間かけてお客様の声アンケートを読み込んでいました。
しかし店舗が70店舗に到達した頃、その活動に限界を迎えました。
そこでFC戦略を採用したのです。
ただし、ただココイチの看板を貸しただけではありません。
会社のモットーを叩き込むために一度社員として採用した後に、FCオーナーとして独立できる制度を生み出しました。
社員として働いている時は自社のモットーのみならず、飲食業の経営ノウハウなど様々な知識を身につけることができます。また独立後はロイヤリティーを徴収しないなどFCオーナーにもメリットがあります。
このようにWin-WinのFCを生み出した結果、10年間のFC廃業率はわずか8%です。一般的なFCの廃業率である約40%と比較すると、壱番屋のFCは潰れにくいことが分かります。
この結果、壱番屋の収益の6割がFC加盟店に対するカレーソースや揚げ物の販売益であるため、収益を押し上げたと思います。
そして、ゴーゴーカレーや日乃屋カレーの店舗数が100店舗に満たない中、
ココイチの店舗は世界各国で1,400店を超えています。
今や競合他社は追いつけないほど店舗展開しており、「カレーといえばココイチ」というポジションを確立しているのです。
今後はどのように成長するのか?
以上のように、壱番屋はFCを武器に成長してきた企業であると考えます。
一方で単価が高く顧客離れが心配ですが、強みであるFC制度がそれを下支えする仕組みになっていると分析しました。
では壱番屋は、今後どのような戦略を採用することが良いのでしょうか?
そのヒントが今回の肉大盛りカレーです。会社としては値下げをしない方針ですから、働く男性のニーズと腹を満たすことで利益を伸ばすのが良いのではないでしょうか?
最後に株価を見てみましょう。
コロナショックで大幅な下落があり、その後は軟調でしたが、23年になってから上昇しています。コロナの収束と訪日外国人の増加が見込まれることから外食産業の需要が回復する期待があります。
また、100株あたり年間2,000円の株主優待も株価を下支えしていると考えます。
23年4月19日現在のPERは58倍です。今から投資するのは割高感がありますが、今後どのような商品が販売され、ココイチが成長するのか、注目していきましょう。
※上記は企業業績等一般的な情報提供を目的とするものであり、金融商品への投資や金融サービスの購入を勧誘するものではありません。上記に基づく行動により発生したいかなる損失についても、当社は一切の責任を負いかねます。内容には正確性を期しておりますが、それを保証するものではありませんので、取り扱いには十分留意してください。
『
バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問
バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問
』(2023年4月21日号)より
※記事タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による
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【毎日少し賢くなる投資情報】長期投資の王道であるバリュー株投資家の視点から、ニュースの解説や銘柄分析、投資情報を発信します。<筆者紹介>栫井駿介(かこいしゅんすけ)。東京大学経済学部卒業、海外MBA修了。大手証券会社に勤務した後、つばめ投資顧問を設立。