クレディ・スイスの「AT1債」が無価値になったことが話題になりました。今、巷ではかなり高利回りの債券が出回っています。債券の見極めはどのようにすればよいのでしょうか。また、株式投資と比べてどちらが良いかも考えてみたいと思います。(『 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』栫井駿介)
プロフィール:栫井駿介(かこいしゅんすけ)
株式投資アドバイザー、証券アナリスト。1986年、鹿児島県生まれ。県立鶴丸高校、東京大学経済学部卒業。大手証券会社にて投資銀行業務に従事した後、2016年に独立しつばめ投資顧問設立。2011年、証券アナリスト第2次レベル試験合格。2015年、大前研一氏が主宰するBOND-BBTプログラムにてMBA取得。
クレディ・スイス「AT1債」が無価値に
<「AT1債」とは>
主に金融機関が発行する社債で、「その他Tier1債」とも呼ばれる。銀行が自己資本比率規制を満たすために発行する債券で、発行元が破綻した場合には、利払い停止・元本削減・株式転換が行われる場合がある。
<クレディ・スイスAT1債が無価値になったワケ>
クレディ・スイスは同じスイスのUBS銀行と救済合併されたため、「経営破綻」せず、株式も維持された。しかし、目論見書には元本削減に至る条件の1つに「公的機関による特別な支援」の記載があり、これに基づき無価値化。結果として、本来の順序とは逆にAT1債のみが消滅。
<想定できた?>
AT1債は基本的には機関投資家に売られるものですが、9.75%という高い利回りで人気ということでアジアを中心に個人にも売られていました。
日本ではおよそ1,000億円が、いわゆる富裕層と呼ばれる個人に売られていました。
今回のクレディ・スイスはかなり特殊な状況で、機関投資家でさえも見極めが難しいものであり、個人投資家にはそうそう見極められるものではありません。
しかし一方で、「クレディ・スイスがヤバい」ということは機関投資家の間では知られていたことです。
ヤバい債券の特徴
特約を全て読むということは実質的に不可能かと思いますが、ヤバい債券を表面的に見極める方法はあると思います。
<金利が高い>
国債の金利に対していくらプラスされているか(スプレッド)を見ると、投資家からどのくらいのリスクと考えられているかが分かります。
高リスクだとされているほどスプレッドが大きくなります。
クレディ・スイスの際には、発行時で9.75%の金利がありました。
当時のアメリカの5年債が3%で、6%以上もプラスされている状況でした。
<CDSが高騰>
CDS
「クレジット・デフォルト・スワップ」のこと。
企業や国などの破綻リスクを売買するデリバティブ(金融派生商品)で、投資対象の破綻に備えた保険の機能を持ちます。CDSの買い手は売り手に一定の手数料を支払う一方、投資先がデフォルト(債務不履行)となった場合には売り手が損失を肩代わりし、「保険金」を支払います。
クレディ・スイスは、発行された2022年6月時点でかなり上がっていて、「危ない」という兆候を見せていました。
<やたら複雑>
今回も様々な「特約」が付いていましたが、そもそも「分からないものには手を出すな」と言われています。