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お金をかけたら老後貧困にまっしぐら。マイカー、マイホーム、生命保険、教育費に仕掛けられた4つの罠=神樹兵輔

日本の生命保険は無駄の塊

続いて「生命保険」です。

当コラムの第4回(2022年7月25日号)でもお伝えしましたが、日本の生命保険には「相互扶助の精神」がはたらいていません。

保険加入者と保険会社は利益相反の関係にあるからです。

にもかかわらず、一般家庭では、毎月生命保険にものすごい金額をつぎ込んでいます。

生命保険文化センターの2021年末の公表データによれば、生命保険(個人年金保険含む))の世帯加入率は、89.8%で、医療保険の加入率は93.6%です。

健康保険組合の「高額療養費制度」があるので、高額な医療費は健保組合から後日支給され、数万円程度の負担にすぎなくなるので、医療保険など不要なのに、騙されて医療保険に加入する人が多いことに驚かされます。

そして、世帯年間払込保険料は、37.1万円です(月額換算3.1万円です)。

実に多くの世帯が、生命保険に加入し、毎月多額の支払いをしていることがわかります。

これは、世界の常識と比べると、かなりスゴイ高額払込額なのです。

ちなみに、驚くべきことに、払込額がピークだった1997年には、年間払込額が67.6万円(月額換算5・63万円)に達していましたから、世界でも突出した狂気の払込額で「日本人の保険好き」を見事に象徴していたのでした。

ところで、かつてメディアの中では、珍しいことに、毎日新聞だけが「日本の生命保険料は、欧米の同内容の商品と比べて、2~3倍も高い」という趣旨の記事を書いています(2001年8月5日付)。

マスメディアにとって、保険会社は多額の広告料を払ってくれる重要なスポンサーに当たりますが、こんな記事を書いたのですから、驚かされたのです。

スポンサータブーを冒した、さすがの毎日新聞でした。よい噛みつき方をしてくれたものです。

筆者が、日本の生命保険が「無駄の塊」とつねづね批判するのは、保険会社は加入者との利益相反の関係にあるからです。

毎月の保険料の65%程度が、保険会社の利益と経費(人件費や莫大な広告宣伝費、代理店や保険外交員の販売手数料など)に消えているのが実態だからです(付加保険料)。

つまり、万一の時、肝心な加入者への保障に回される分は、残りのたったの35%程度しかないからです(純保険料)。

毎月3万円の保険料を払っていても、2万円分が保険会社のフトコロに入っているからです。

これでは保険は相互扶助の形になっているとはいえないでしょう。

つまり、保険の原価(正味の保障分)に相当する部分が35%程度なので、ラーメン屋での原材料費と変わらないからです。

ラーメン屋なら納得の原価設定ですが、生命保険は相互扶助の体を装いながら、実際はボッタくりのイカサマ詐欺商品になっているわけです。

保険料の安いネット生命保険の場合は、これよりはまだマシです。

ネット生命保険料の場合は、加入者の正味保証に回る純保険料比率が8割近くあり、残りの2割強が保険会社の利益とコストになっているからです。これならまだ納得もいくでしょう。

しかし、もっと素晴らしい相互扶助を謳った商品があることに気付いてほしいのです。

商品内容は生命保険とは異なりますが、営利を目的としない都道府県民共済というのがあるのです。

共済保障の草分けの「埼玉県民共済」の場合、加入者の正味保障に回される純保険料相当分が、なんと96%もあるのです。

ゆえに、事業費として使われるのは、残りのたった4%のみです。

死亡保障400万円(事故1,000万円)、重度障害400~1,000万円、入院(病気や事故)は1日8,000円で最高120日まで保障されます(60歳まで)。

これで、月額掛金がたったの2,000円なのですが、実際には割戻金が半分ほどもあるため、あとから掛金が戻ってきて、実質月額掛金はたったの1,000円程度になります。

保障をもっと多く欲しければ、口数を増やすだけなのです。

埼玉県民の2.5人に1人が加入していることで、その素晴らしさは折り紙付きでしょう。

民間の生命保険会社は、数々の特約を付けて生命保険加入を勧めますが、販売員が病歴などの告知事項を伏せるよう誘導して加入させたり、特約の請求がなかったから保険金を払わなかったという事例が、全ての保険会社に及び、不当な不払い事例はてんこ盛り状態です。

金融庁が公表した2001年から2010年までの10年間だけでも、保険金の不当な不払い事例は116万件、1,136億円にのぼったのですから、詐欺同然でした。

そろそろ民間の生命保険には見切りをつけて、家族みんなで、コスパ最高の都道府県民共済への加入を検討してみてはいかがでしょうか。

高額な教育費 はギャンブルに等しい

最後に、大きな費用の掛かる「教育費」の問題です。

文部科学省の「子供の学習費調査」によれば、授業料、給食費、教材費などに、塾や習い事なども加えた教育費の平均値は、次のようなものになっています。

●公立幼稚園3年間で約65万円(私立は159万円)

●公立小学校6年間で約192万円(私立は960万円)

●公立中学校3年間で146万円(私立は約422万円)

●公立高校3年間で約137万円(私立は約290万円)

●公立大学4年間で約248万円(私立文系373万円・私立理系442万円)

幼稚園から大学まで、すべて公立なら約800万円。

高校と大学だけが私立なら、ざっと1,090万円。

幼稚園から大学まですべて私立なら、およそ2,230万円におよびます。

教育費はこんなにかかるのです。

高校や大学で、自宅通学せずに、寮に入ったり下宿したりすれば、もっとかかります。

大学などで海外への短期留学などすれば、国にもよりますが、300~400万円単位の加算が必要でしょう。

そして、これだけ費用をかけて、子供一人を育てても、日本の労働市場では、ほぼ4割が賃金水準が低いまま永続する非正規雇用の労働者になってしまうのです。

親としては、子供がそうなったら、やってられない気分になるでしょう。

高い教育費をかければかけるほど、子供の成長と成功はギャンブル性を帯びるからです。

ましてや、すぐそこにはAI社会の到来が待っています

通常の学習経験で得られた認知能力は、AIに取って代わられるかもしれない時代になってきているのです。

地頭のよい人間=非認知能力の優れた人間でないと、これからの未来社会を渡っていくことは出来ないかもしれないといわれているのです。

今では外国語の翻訳機まで登場し、あらゆる現場で「ChatGPT」が席巻し始めている現代です。

やみくもに、子供を塾に通わせて、詰め込み教育に翻弄させるのは、的外れにもなりかねない時代がやってきているのです。

子供が勉強嫌いなら、他の好きな道をすすむべく誘導してあげるほうが、これからの親の大事な役目となるのではないでしょうか。

実際、いろいろと、肝心の子供と真剣に話し合ってみることが重要になるでしょう。

以上、さまざまな観点から、人生設計上の蓄財や資産形成に障害をもたらしかねない「マイカー、マイホーム、生命保険、教育費」について、一つの考察を試みましたが、ご参考になれば幸いなのです。

老後に必要となる資産形成について、真剣に考える機会となることを願ってやみません。
以上、今回はここまでといたします。次回は「赤字自治体続出の『ふるさと納税』制度! 金持ち優遇で自治体寄生企業を肥やすだけ! 税金の無駄遣いを推進する制度はただちに廃止すべし」というテーマで、その悲惨な状況をえぐっていきます。

それでは、次回をお楽しみに! どうぞご期待くださいませ。

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※本記事は、神樹兵輔氏のルマガ『神樹兵輔の衰退ニッポンの暗黒地図――政治・経済・社会・マネー・投資の闇をえぐる!』2023年5月15日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会に今月分すべて無料のお試し購読を

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