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なぜ景気「足踏み」も株価はバブル後最高値を更新?3つの上昇要因と落とし穴=斎藤満

株価上昇の要因その2:植田日銀効果

今や主要国が軒並み金融引き締めでインフレに対処する中、世界で日本と中国だけが依然として金融緩和を続けています。このうち中国はむしろデフレ的な分、金融緩和もうなづけますが、それでも欧米の利上げの中で金融緩和をしているために、資金が中国から流出し、人民元安になっています。先週末にはオフショア人民元が一時7.07元台まで下げました。

中国に緩和の必然性があるとなれば、日本だけがインフレの中でむしろ金融緩和を続ける「異常な国」となります。植田日銀としてはチャンスをみてYCCなど、緩和スキームの見直しをしたかったようですが、海外経済の後退懸念が強まり、さらに欧米発の金融不安も指摘される中で、緩和の修正が難しくなった面は否めません。それでもインフレが日銀の予想に反して、この4月も加速しています。

国内の要因からみれば、インフレ目標の超過達成が見込める中での大規模緩和継続は通らないのですが、外部から何等かの圧力が働いている可能性もあります。特に国際金融資本からすれば、欧米が引き締めを続ける中で、日本と中国が緩和を続けることが、ある意味では逃げ場をつくってくれているだけに、都合がよい面もあります。実際、IMF(国際通貨基金)は日銀の緩和継続に理解を示しています。

彼らにしてみれば、欧米に加えて日本まで引き締めに出れば新興国が持たない、との懸念があります。特に中国も含めてアジア経済への負担が大きくなるので、そこへの配慮を求める、ということになります。「国際金融村」から「村八分」にされないように、植田総裁も彼らに気を遣わざるを得ない面があります。ドルで割安となった日本株を外人が買えば、円建ての株価はさらに上がります。

株価上昇の要因その3:株主尊重経営

そして最後に、日本企業の経営者が株主への配慮を強く意識していることです。少なくとも2つの点が指摘できます。1つは、利益を上げても投資や人件費に還元せずに、自社株買いに充てて、株の需給改善、株高を演出しています。投資家はこれを好感してまた株を買います。米国企業だけでなく、日本企業も近年、自社株買いを高める傾向にあります。

また経営の効率化も、むしろ企業の顧客より、株主を意識したものが目立ちます。例えば、銀行の例でみますと、長年にわたる超低金利、マイナス金利で収益が圧迫される中で、経営の合理化、効率化を求められています。そこで銀行はコスト削減のために有人店舗を減らし、ATMを他行と共有化して数を減らし、さらに振込手数料の引き上げ、新規の通帳発行手数料徴求を打ち出しました。

これは一見コスト低減、効率化で収益確保に見えますが、銀行の顧客に対するサービスの低下、コストの預金者への付け替えにすぎません。つまり、顧客よりも株主の利益を重視した効率化となっています。これは長い目で見ると、企業の競争力を低下させ、顧客の離反を進める面があり、日本経済にはマイナスとなります。

Next: 日本買いはいつまで続く?「5月に売って待て」の格言も

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