ここから一気に社会保障費が膨らんでいくということ
子どもが減って高齢者が増えるのだから、社会保障費は増大することになる。
社会保障費とは、国や地方自治体が社会保障制度を通じて提供する福祉サービスや支援のために必要な費用のことを指す。
これは、高齢者・障害者・失業者・貧困層など、社会的なリスクや困難に直面している人々への支援を目的としているものだが、その中でも高齢者に支払うためのものが増大している。
具体的には、年金・医療費・介護費である。障害者支援費なども、もちろん増えているのは間違いないのだが、それよりも何よりも増え続ける高齢者に支払う年金と医療費の増大が凄まじいものになっている。
1970年代、社会保障費の給付は3兆5,000億円であった。それが、1990年になると47兆4,000億円となり、2000年になると78兆4,000億円となり、2010年には105兆4,000億円、そして2022年は131兆1,000億円となっている。
いかに社会保障費が増大しているのか、数字だけでも分かるはずだ。
ちなみに日本の社会保障制度は、原則として「社会保険料で費用を負担する」のが基本となっている。そして、この社会保険料は「企業と個人」がそれぞれ負担することになっている。すなわち、現役世代に負担が集中する。
日本はすでに30年以上も成長していない。そんな中で若年層が減っていて高齢者がどんどん増えていく。とすれば、1人あたりの負担は増えるに決まっている。今、まさにそれが起きているのである。
2022年は、一部では「社会保障費の危機の始まり」であるとも言われているのだが、それは団塊の世代(1947年〜1949年に生まれの世代)が後期高齢者である75歳以上となりはじめるからである。
75歳以上にもなると、ほとんどの人が健康寿命を急激に失い始める。すなわち、1人あたりの医療費や介護費用が激増する。2022年から、彼らが後期高齢者になりはじめたということは、ここから一気に社会保障費が膨らんでいくということなのである。
現役世代は、税金・社会保険料の取られ過ぎで苦しい
物価が上がっているのに年金は薄く薄く削減されている。医療費の負担も徐々に徐々に増えていく。高齢者の老後の生活コストが激増している。
しかし、すでに社会保障費は膨らむだけ膨らんでいるわけで、すべての高齢者に手厚い社会保障を提供することは不可能になりつつある。
日本経済がどんどん成長して、日本人の賃金もどんどん増えていったのであれば、現役世代の社会保険料が増えていったとしても、賃金自体が伸びているのだから、それで吸収できただろう。
しかし、日本経済はこの30年、政治の無策が続いたのでほとんど成長しない国となってしまった。それこそ、世界全体の中での日本のGDPは25年ほど前は18%も占めていたのに、現在では6%くらいにまで縮小している。
日本は今も過去の蓄えがあるのでかろうじて先進国の体面を保っていられるのだが、今後も先進国であり続けられるかどうかは未知である。最低賃金で言うと、日本はOECDの主要先進国の中では実質的に最下位である。
はっきり言うと、日本の非正規雇用の中で最底辺の人たちの賃金レベルは、もう先進国ではないレベルにまで落ち込んでいるということになる。
現役世代がそんな状況なので、現役世代がかなりの額を負担する社会保障費を「物価が上がっているから」「高齢者が増えているから」と、もっと引き上げるというのは、まさに現役世代が高齢層の奴隷になるのも同然の状況になってしまう。
今でさえ現役世代は「税金・社会保険料の取られ過ぎで苦しい」と悲鳴を上げている。それも無理はない。何しろ国民負担率は約48%となっているような時代なのだから、これ以上の負担増はさすがに厳しい。
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