今年2月にあった早稲田大学の一般入試において、メガネのように装着するカメラ機能付きの機器「スマートグラス」を悪用したカンニング行為があったと報じられ、大きな波紋を呼んでいるようだ。
報道によれば、都内の無職少年はスマートグラスで試験問題を撮影。その画像を手元のスマホからXに流出させて、解答を求めたとのこと。
X上での不正なやりとりに気が付いた人物が早大に連絡し、その後別の学部の試験にも訪れた少年が、スマートグラスを着用していることが確認できたため、警視庁に通報したという。
少年は「共通テストの結果が悪く、志望していた国立大学に落ちた。他の大学も落ちることが不安で、不正を思いついた」と供述しているとのこと。警視庁は早大の入試業務を妨害したとして、この少年を偽計業務妨害容疑で書類送検する方針を固めたということだ。
共通テストでの不正発覚でスマホ禁止が厳格化されるも…
官僚登用のために中国において古くから実施されていた「科挙」においても、そういった行為が横行していたという話があるように、試験そのものの存在とともに歴史を重ねてきたといっても過言ではないカンニング行為。
ただ旧来のカンニングが、様々な手段で仕込んだ“カンニングペーパー”を試験中に見るといった手口や、あるいは替え玉受験といったものが主流だったのに対し、ケータイやスマホが広く普及した現代では、問題を試験時間中に外部へと流出させ、それを誰かに解いてもらうといった、より巧妙化した手法が主流になっているようだ。
例えば古いケースだと2011年に、京都大学の二次試験の問題の一部が、試験時間中に「Yahoo!知恵袋」に投稿され、第三者がそれに回答していたことが発覚。
携帯電話を利用して試験問題を流出していた投稿者は、その後の調べで京大以外にも同志社・立教・早稲田の各大学の試験でも、同様の行為を働いていたことがわかり、当時大きな騒ぎとなった。
また近年だと、2022年1月に実施された大学入学共通テストにおいて、試験問題がスマホを通じて試験時間中に外部に送信されるという事件があり、この影響で翌年度の共通テストからは、スマホ使用禁止がより厳格化されることに。
具体的には、試験前に試験監督が机の上にスマホを出すよう指示し、受験生は一斉に電源を切ったうえでバッグにしまう……といったものだが、これに関しては大学入試センターの関係者からも「監督業務の詳細は言えないが、受験生一人ひとりをチェックするのは難しいのではないか」との声があがっているようで、とてもじゃないが監視の目が行き届かないというのが実際のところのようである。
電子カンニングに為す術のない学校側
実際、今回の件に関しても、スマートグラスで撮影した画像をスマホに移し、そこからSNS上に投稿するといった、カンニングした受験生による一連の行動が、現行犯では把握することができなかった学校側。
しかしながら、それ以上に迂闊だったといえそうなのがこの受験生で、スマートグラスで撮影した試験問題の画像を、こともあろうか不特定多数が見られるSNS上に投稿したことにより、カンニング行為が学校側に速攻バレる事態を招くことに。
さらにこの受験生は後日、同じスマートグラスを着用して早稲田の別の学部の試験に現れたことで、先述の通報で警戒を強めていた学校側にあえなく見つかり、そのまま警察に通報されたということ。
こういった経緯もあり、SNS上では「やった事もアホだが、手段自体もバカだな」「SNSで広く依頼せざるを得なかった友達の少なさが敗因」などと、大いに揶揄される展開となっているようだ。
「スマートグラスでカンニング」、てっきり友人たちに答えを求めたのかと思ったらSNSで答え募って通報されたと、バカなのw#Nスタ
— 豪腕一閃@絶対領域/邪悪な聖杖/豪ワンピース/チョコボール紳士/ドラゴン会🐲会長/悪徳美腋評論家 (@goh_wan) May 15, 2024
#ニュースウオッチ9
スマートグラスは多分こんなミエミエの奴じゃなく普通のメガネを見えるモノがあるから試験官は容易に分からないと思うが、Xに投稿するか?
他の多数の人間も見るし、正解が出来る能力がある人間が返答するとも限らないのに、やった事もアホだが、手段自体もバカだな
そりゃ落ちる— 前田修 Life science researcher, clinical trial superv (@maedaosamu1962) May 15, 2024
早稲田の入試で不正、受験生を書類送検
①スマートグラスで試験中に問題を撮影
②スマホに転送してSNSへアップ
③フォロワーが解いて解答を返送やってることがトムクルーズ。
ただ、SNSで広く依頼せざるを得なかった友達の少なさが唯一の敗因。
チームの重要性がわかる。https://t.co/gUFrxFNMQQ
— Henry (@HighWiz) May 15, 2024
とはいえ、逆に受験生側によるこれらの迂闊すぎる行動がなければ、カンニングが露見していなかった可能性が大きいといったところ。
SNS上では「もう電波をジャミングしないと防げない」といった声もあがっているのだが、実のところ文部科学省も、先述した2022年の共通テストでの事件を機に、電波遮断装置の導入を検討したものの、巨額の経費がかかることが課題となり見送られたとのこと。
通信機器の小型化や性能向上により手口が巧妙化するいっぽうの“電子カンニング”に対し、学校側は為す術もないということが、今回改めて浮き彫りになった格好だ。
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