「満室物件」は不動産投資初心者には特に人気
投資用不動産物件は、1棟もの新築や中古のアパート、1棟ものマンションなどの集合住宅、一室だけの区分所有マンションなど、すでに入居者がいて「利回り」の高い物件が人気です。
いわゆるオーナーチェンジ物件です。
利回りの高い物件というのは、家賃収入が高いわりに、物件価格が安い物件のことです。
「利回り」が高い――というのは、たとえば、満室での家賃収入が年間で480万円(月額40万円)の物件で、売り出し価格が3,200万円なら、表面利回り(税金や諸経費を含まない)は、(480万円÷3,200万円=0.15)の計算で15%ということになります。
10%以上の利回りというのは、超低金利時代の現在にあっては、非常に高い利回りです。
東京ではありえない高い利回りですが、地方都市の築年数の古い物件でなら、不可能な数値の利回りではありません。
ローンの年間返済額が240万円なら、(家賃480万円-返済額240万円=240万円)で、年間240万円のキャッシュフローが新たに生まれます。家賃収入の半分が家主に入ってくる計算です。
つまり、満室で毎月20万円の収入が新たに生み出されたことになるわけです。
サラリーマンが低金利で借金をして、毎月20万円もの収入がもたらされるーーというのは、非常に魅力的に思える投資スキームでしょう。
部屋数が10室なら、1室当たり4万円平均の家賃収入になり、満室で月額40万円の家賃収入です。
ただし、反対にこれが全部空室だと、毎月のローン返済額20万円で、年間240万円の持ち出し物件という悲惨なことにもなるわけです。
アパートやマンションでは、人口減少の影響を受けて、空室が増えています。
30年以上前なら、1カ月もかからずに次の入居者が見つかったものでしたが、今や日本中で部屋が余っていますから、半年や1年経っても入居者が見つからない――といった物件も珍しくありません。
それゆえにこそ、満室状況の1棟もののアパートやマンションは、人気物件となるので、不動産業者にとっても、非常に売りやすくなるのです。
当然ですが、初めて不動産投資に乗り出そうというサラリーマンにとっても、満室物件や満室保証物件は安心感があるでしょう。
「サブリース物件」には多くのデメリット
新築物件のアパートやマンションには、最初から「サブリース契約」が付いた売り出し物件も少なくありません。
サブリースとは、業者が家主から物件を丸ごと「一括借り上げ」した転貸借契約物件のことです。
「サブリース契約による満室保証物件」はさらに魅力的に映ります。
空室があっても必ず満室状態での家賃収入がある――というのは、サラリーマン不動産投資家の初心者であるほど、安心材料でしょう。
2020年12月に「サブリース新法(特定賃貸借契約の適正化に関する法律)」が施行されてからは、「30年間一括借り上げ」などの大手住宅メーカーが盛んに行っていた誇大広告が禁止されましたが、実は業界ではサブリース契約に関わるトラブルがてんこ盛りでした。
「30年間一括借り上げ」という広告を信じて、新築アパートを購入したら、1年後にはサブリース賃料を大幅に値下げしたい――とサブリース契約の業者から言い渡され、家主のローン返済に支障をきたした――といった事例が少なくなかったからです。
あるいは、入居率の悪いアパートの場合は、1年後にサブリース契約を突然業者側から打ち切られてしまい、空室の増加でこれまたローン返済ができなくなった――という事例もあります。
さらに、アパートの稼働率がよいので、サブリース契約を打ち切って、家主自らがアパートの「自主管理」をしようとしたら、サブリース契約の業者から、「サブリース契約の解除には、家賃収入の1年分の違約金の支払いが必要!」などと契約条項を盾にとられ、多額の解約料の請求を受けた――といった事例にも事欠かなかったのです。
Next: 「サブリース契約」は業者が必ず儲かるカラクリ