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株価ピークから半値以下「ワークマン」は買いか?急拡大の“代償”と直面する3つの壁=栫井駿介

今回はワークマンについてです。ワークマンの業績は好調に見えますが、株価は実はこの2〜3年ぐらい右肩下がりとなり、ついにピークから半分以下になってしまいました。コロナ禍でアウトドアブームも下火になり、暗雲が立ち込めていますが、実はそれ以上にワークマンの経営はかなり難しい局面に立たされているように感じられます。ワークマンの経営を通じて、長期投資の本質についてお話ししたいと思います。(『 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』栫井駿介)

プロフィール:栫井駿介(かこいしゅんすけ)
株式投資アドバイザー、証券アナリスト。1986年、鹿児島県生まれ。県立鶴丸高校、東京大学経済学部卒業。大手証券会社にて投資銀行業務に従事した後、2016年に独立しつばめ投資顧問設立。2011年、証券アナリスト第2次レベル試験合格。2015年、大前研一氏が主宰するBOND-BBTプログラムにてMBA取得。

ブームから一転?

まず、業績についてです。

ワークマン<7564> 業績(SBI証券提供)

ワークマン<7564> 業績(SBI証券提供)

過去10数年間の業績について、特に2019年から売上と利益が大きく伸び始め、約5年前からは既に利益が倍増している状況です。
また、今期も増収増益の予想となっています。
しかし、株価を見ると、2020年のコロナショック前に一旦ピークを打ち、その後急落しました。

ワークマン<7564> 週足(SBI証券提供)

ワークマン<7564> 週足(SBI証券提供)

その後は一度1万円に戻りましたが、現在は約4,300円で、1万円から半分以下になっています。

かなり話題になった銘柄で、保有している方々もどうすべきか迷っているかもしれません。
このような方々や、安いから購入しようと考えている方々に、ワークマンの現状を分かりやすく説明したいと思います。

ワークマン成功と陰り

さて、ワークマンがどのように成功してきたか考えてみたいと思います。

ワークマンは昔から存在する企業で、ベイシアグループの一部です。
ワークマンはもともと作業服や屋外労働者向けの商品を扱っており、言ってしまえば地味な存在でした。
そこに、ベイシアグループの創業家の親族である土屋さんが専務として参加し、改革を進めました。
その改革の中で、Excelを用いた経営を導入し、売上の数値を細かく管理しました。

この経営改革により、予想外の商品が売れていることが明らかになり、商品の一般向け展開が始まりました。
特に、滑りにくい靴などが好評で、妊婦さんやママ向けにも売れることが分かりました。
ワークマンは元々地道な経営を進めていましたが、Excelの数字から予測外の需要に気づくことができました。

さらに、ワークマンはスケールメリットを活かし、高品質で技術的に高度な商品を安く提供できました。
これにより、アウトドア商品市場に進出し、客層が広がりました。
一般向けに商品を提供することで、ワークマンのファッション業界への進出が進み、カジュアルウェアも提供するようになりました。
さらに、「#ワークマン女子」として女性向けのファッションにも進出しています。

最近の売上の伸びについては、主にカジュアルウェアの拡大が大きな要因です。
ただし、この快進撃にもかかわらず、最近ではアウトドアブームがやや鈍化している兆候が見られます。
月次の売上高、客数、客単価のグラフを見ると、特にこの半年間、客数が減少傾向にあり、客単価が上昇していても、売上高は客数の減少により減少していることが多いです。

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出典:ワークマン

ワークマンは既存店舗数を増やしているため、売上自体は増加していますが、既存店売上高が前年を下回る傾向が見られます。
最近の株価の下落はこの辺りに起因しています。

実際、今期の業績についても、増収増益が予想されていましたが、直近の第一四半期(2023年6月30日まで)の決算を見ると、減益になっていることが分かります。
原材料高の影響も確かにありますが、店舗数の増加にもかかわらず既存店舗が前年割れしているのが一因です。

Next: 株価は戻るか?ワークマンが抱える3つの問題点

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