「行動経済学における消費行動」とは?
前述の通り、私たちの意思決定には、「脳のクセ」や「偏見」があり、それらを「認知バイアス」と一括りにしています。
こうした行動経済学の概念中の柱ともなる学説が「プロスペクト理論」です。
別名「損失回避の法則」とも呼ばれるものです。
これは「人は目先の利益を求め、損失は回避したい」という人の性向です。
「プロスペクト理論」には、「価値関数」と「確率加重関数」が用いられ、この2つの関数が「認知に歪み」をもたらす要素となっています。
たとえば、価値関数は「10万円もらった時の嬉しさよりも、10万円を落とした時のガッカリ感」のほうが喜びの2.25倍も感情に影響が及ぶとされます。
また、確率加重関数は、人は「高い確率を低く、低い確率を高く見積る」という性向を示し、「志望校の合格確率35%」と宣告された受験生でも、「オレはイケルはず」と楽観視したり、「手術の成功率は99%!」と告げられたのに「ひょっとして失敗するかも」などと不安になります。
これらは確率40%を境に起こる現象とされています。
一般に、人は買った株が上がると、目先の利益を確定したくて早く売りたくなり、下がった場合は「また上がるはず」と損失を確定せず、売らずにいて、もっと下がり「塩漬け株」にしがちです。
これもプロスペクト理論で説明できる性向です。
また、毎月家賃を払うのがもったいないからと、思い切って35年ローンを組んで5,000万円の新築住宅を買う人もいます。
35年という長い年月や、5,000万円という大金のローンをうまく払い続けられるのかどうか――といった確率のほうは、かなり低く見積もってしまう残念な人が多いわけです。
人生には「認知バイアス」に惑わされた「無駄遣い」がいっぱい
つまり、「認知バイアス」に惑わされて、人生には多くの無駄な消費をしてしまう――ということでもあるのです。
それは「モノの原価」を冷静に考えないことが1つ目には上げられるでしょう。
もう1つは、「見栄」や「一過性の向上心」に因るからです。
以前の本メルマガでも言及しましたが、人生の5大無駄遣い、といわれるのが「マイホーム」「マイカー」「教育費」「保険」「美容関連」です。
マイホームは長期のローンに縛られ、完済時はボロボロです。マイカーは車体費用より維持費がベラボーです。
教育は本人に見合っていないことが多いでしょう。
また、生命保険は加入費用の多くが広告や人件費に費やされ、いざという時の補償が少なすぎ、都道府県民共済のほうが「コスパ最高」という事実を知らない人が騙されています。
そして、最後の美容関連ですが、原価数十円の安い原材料の化粧品を、バカ高い値段で買うこと自体が狂っています。
百均の化粧品と中身が変わらない事実を化学的にも知るべきでしょう。