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女性客8割のスープストックトーキョー、なぜ業績V字回復?離乳食で「炎上」もほぼ無傷だった理由=山口伸

女性ウケした理由は清潔感と居心地の良さ

株式会社スープストックトーキョーの業績を振り返ると、20年3月期に87億円あった売上高はコロナ禍の21年3月期には70.8億円まで落ち込んだ。

しかしV字回復を遂げて23年3月期には98.8億円となり、今期24年3月期は100億円越えを見込んでいるようだ。お洒落なスープ店としてブランドを確立したといえる。

トートロジーのようになってしまうが、女性ウケした最大の理由は女性客が多いことにあるだろう。スープをメインとしているため十分に食事を採りたい男性客は入店せず、自ずと女性客が多くを占めるようになったことで女性が入店しやすくなったと考えられる。とはいえ、スープだけではなく食事もある程度は充実しているため、食事客を取り込むことに成功している。

そして店舗デザインや清潔感も、女性客を取り込む重要な要素だ。同社ではスープを目立たせるため、内装には素材そのものの色以外は使わないというルールを設けており、木やモルタルに派手な着色を施していない。そして居座りたくなる空間づくりを心掛けているという。落ち着いたカフェのような雰囲気作りが集客につながっているのではないだろうか。

また、具体的な名前をあげるのは憚られるが、男性客の多い某丼ぶりチェーンや麺類チェーンにはテーブルの汚れが目立つ店舗も多い。一方、Soup Stock Tokyo の店舗は客層が影響してか清潔で汚れは目立たない。清潔な店舗で食事したいという女性客の受け皿にもなっていると考えられる。

炎上した離乳食無償提供の背景

そんな同社だが2023年4月に離乳食の無償提供を発表した際は、SNSで炎上した。「もう行かない」、「ベビーカーが邪魔」といった、女性客によるものと思われる辛辣な投稿が相次いだ。

だがこれに対し同社は書面で発表を行い、「世の中の体温をあげる」という企業理念とともにバリアフリーを目指す同社の方針を掲げた。ちなみに同書面で謝罪は一切行っていない。

こうした姿勢は評価できる。一般的にSNSで怒りを振りかざすのはごく一部であり、業績への寄与度はかなり低いと言われている。安易に謝罪せずポジティブな文面で会社の方針を堂々と公表する姿勢は、お客様主義が過剰になりすぎている現代で参考になるだろう。

ちなみにSoup Stock Tokyoは炎上する以前から冷凍スープの出産祝いセットを販売しており、同商品は祝い品の定番として人気となっていた。

離乳食無償化の背景には新たな客層を取り込みたい狙いがあるとみられる。幅広い年齢層をターゲットとしながらも、同社は「秋野つゆ」という働く女性を事実上のペルソナとしてブランドを築き上げてきた。だが近年の店舗数は50台で頭打ちとなり、知名度の割に店舗数は多くない。地方でもターミナル駅の近くに店舗を構えているが、やはり首都圏がメインだ。

こうした状況下の打開策として離乳食無償化を始めたと推測される。客層を従来の一人客から子連れ客に広げたい意図があるのだろう。

新たな取り組みが成功するかどうか、今後の行く末に注目してみたい。

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image by: yu_photo / Shutterstock.com
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本記事は『マネーボイス』のための書き下ろしです(2024年4月3日)
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による

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