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かつての「半導体大国ニッポン」が凋落した本当の理由。罪深き「日米半導体協定」での政府の失態とは?=辻野晃一郎

罪深い日米半導体協定

日本の半導体産業の衰退には、大きく分けて、「政治的な理由」によるものと「技術的な理由(企業体質や企業戦略にまつわるもの)」によるものの2つがあるように思います。

まず、1つ目の政治的な理由については、1986年に結ばれた「日米半導体協定」が大きなきっかけになったことは間違いないでしょう。日米半導体協定には、第一次(1986年~1991年)と第二次(1991年~1996年)があり、合計10年間にわたって効力がありました。

背景としては、戦後、日増しに産業競争力を高めて米国の基幹産業を脅かす存在になった日本に脅威を感じた米国が、1988年、俗に「スーパー301条」と呼ばれる通商法第301条の強化版を制定して、外国製品(特に日本製品)に対する厳しい制裁を科すようになる流れがあります。

半導体に関しては、主にDRAMにおいて日本勢が圧倒的な力を持つに至り、米国でダンピング訴訟などが起こされたことをきっかけに、表向きは半導体を巡る日米貿易摩擦解消のためという名目で日米半導体協定が結ばれました。しかし実際は、スーパー301条による制裁の発動をチラつかせられながら、日本がなるべく米国製半導体を購入するように仕向けられたものです。

特に、第二次協定では、「日本の半導体市場における外国製のシェアを20%以上にする」という数値目標が設定され、これが日本の半導体産業に大きなダメージを与えたとされます。数値目標の設定を許したのは、交渉段階における日本側の明らかな失態でしょう。また、安全保障上の理由から、米国市場における日本製半導体の締め出しも画策されました。

その結果、1990年代に入ってからは、日本製半導体のシェアは大きく落ち込み、技術力でも米国に後れをとるようになっていきました。企業側としても、市場が制限されて思い切った投資が出来なくなったからです。そしてその間隙を衝かれて、米国からの制約がない韓国のサムソン電子などの追い上げを許すことになってしまいました。

−−日本政府(経産省)の失策や、2つ目の「技術的(企業体質や企業戦略にまつわるもの)な理由」について、ぜひバックナンバーからご購読ください。


※本記事は、辻野晃一郎氏のメルマガ『「グーグル日本法人元社長 辻野晃一郎のアタマの中」~時代の本質を知る力を身につけよう~』2023年9月8日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会に購読を。

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「グーグル日本法人元社長 辻野晃一郎のアタマの中」~時代の本質を知る力を身につけよう~ 「グーグル日本法人元社長 辻野晃一郎のアタマの中」~時代の本質を知る力を身につけよう~ 』(2023年9月8日号)より一部抜粋
Image by:yoshi0511 / Shutterstock.com
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による

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